12日(日本時間13日)に開幕する冬季五輪のスピードスケート日本代表が
5日(同6日)、カナダ・バンクーバーの本番会場で初練習した。選手らが着る
金色のレーシングスーツには、2年前の北京五輪で英スピード社の高速水着、
レーザー・レーサー(LR)に苦杯をなめた国内メーカー技術者の悔しさも、
つまっている。研究を尽くした自信作で、夏の「リベンジ」を期す。
1月19日、日本のスピードスケート選手がバンクーバーで着るスーツが東京・渋谷で
発表された。輝く金色が同色のメダルをイメージさせる。「自然で体の一部のような
感覚」。モデルを務めた加藤条治選手(25)は言った。
スーツの機能を説明したのは、スポーツ用品メーカー大手・ミズノの技術者で、
開発に携わった辻中克弥さん。この日が40回目の誕生日だった。
水着の開発にも携わっていた辻中さんに、忘れられない光景がある。
2008年4月、北京五輪を控えて開かれた競泳日本代表選手の合宿。この年、LR
着用の選手が世界新を量産していた。日本選手はそれまで、ミズノを含む国内3社の
水着しか使えなかったが、合宿ではLRを着たがる選手が続出した。「今までの水着と
全然違う」との感想が漏れた。
同年6月の競泳ジャパンオープンで出た日本記録17個のうち、16個がLRによる
ものだった。日本水連は北京五輪でのLR着用を認めた。
LRは伸びない生地を使い、選手の体を強く締め付ける。「締め付ける水着を日本
選手は好まないし、適していない」と考えていた辻中さんは、「負けた」と思った。
だが、「うちの水着を着た方が速かった選手もいた。完敗したとは思っていない」とも。
LR騒動の2年前から、ミズノはバンクーバー用スピードスケートスーツの開発を
始めていた。辻中さんは「LRの影響はなかった。淡々と計画通り進めた」と言う。
ミズノは1988年のカナダ・カルガリー五輪から、日本選手にスピードスケート用
スーツを供給している。2002年の米ソルトレーク五輪まで全身単一素材で作って
いたが、今回のバンクーバー用は、四つの素材からできている。
風洞実験を40回以上繰り返し、どこにどの素材をどの程度配置すればいいか追究した。
その結果、空気抵抗をトリノ用より約5%削減させることに成功。LRのように締め
付けるだけではなく、選手の動きやすさにも配慮した。
「羽が生えるボタンはつけられなかったけど、やれることはやった。あとは選手たちに
頑張ってもらうだけ。ボロ勝ちして欲しい」と辻中さん。
高速水着については、国際水連が昨年7月、従来のLRなどを今春から使用禁止にする
ことを決めている。
日本選手がボロ勝ちしたら? 「ルールが改定されて、うちのスーツがそのあと使え
なくなるかもしれませんね」。自信ありげに笑った。
●スピードスケート代表の高木美帆選手
http://sankei.jp.msn.com/vancouver2010/images/100207/oag1002070901000-l2.jpg http://sankei.jp.msn.com/vancouver2010/images/100207/oag1002070901000-p1.jpg ●冬季五輪で日本選手が着るレーシングスーツを
手にする、ミズノの辻中克弥さん
http://www.asahicom.jp/sports/update/0206/images/OSK201002060114.jpg ◎ミズノ (8022)
http://www.mizuno.co.jp/ ◎ソース
http://www.asahi.com/sports/update/0206/OSK201002060104.html