会社更生法の適用を19日申請した日本航空は、サービスの質が低下する懸念から
乗客をライバルの全日本空輸に奪われる可能性がある。
■すでに“出遅れ”
航空サービス調査会社スカイトラックスのエドワード・プレイステッド最高経営責任者(CEO)は、
日航のサービスは既に過去6週間で「少し落ちた」とみる。同社は日航と全日空の評価をそれぞれ
四つ星としている。最高は五つ星。
プレイステッドCEOは電子メールを通じたインタビューで、「日航の状況は、日本国外で
より多くの顧客が全日空を使うようになる方向に働くと確信する。ここ2、3年、日航は
主力競合会社における質の変化や改善のペースに歩調を合わせることができていなかった」と指摘した。
アジアの航空会社として最大の負債を抱えた日航の会社更生法の適用申請は、日本史上4番目の規模。
同社を支援する企業再生支援機構は19日、グループの人員を約3割削減すると発表した。
再建に向け、総額9000億円の公的資金枠も用意された。
航空業界向けコンサルタント会社インドスイス・エイビエーションのマネジングディレクター、
ジム・エッケス氏(香港在勤)は「これまで快適に非常に良い生活を送ってきた大勢の人々が
人員削減の対象となれば、多くの不満が生まれる。サービスは向こう1年程度、低下するだろう」
と語った。
一方、日航の広報担当、ヤップ・スー・ハン氏は「当社はサービスや安全面の基準を保ち、妥協しない」
と述べた。
■キャセイなど恩恵
大和総研のアナリスト、ケルビン・ロー氏は電話インタビューに応じ、日航の破綻(はたん)で
香港のキャセイ航空やシンガポール航空などが恩恵を受ける可能性があるとの見方を示した。
会社更生法適用の申請は、「ほかの地域への拡大を制限することが予想される」ため、少なくとも
これら航空会社2社にはプラスだという。
また、「日航は中国から撤退すると聞いている」とし、そのため「中国国際航空や中国東方航空など
中国の航空会社に恩恵をもたらすだろう」と語った。北京に比べると商業の中心地である
長江デルタ地域への日本人旅客の方が多いことから、中国東方航空が受ける恩恵の方が大きいと
考えられるという。
日航争奪戦を繰り広げている米アメリカン航空と米デルタ航空については、「アメリカンが出資した場合、
キャセイ航空に対して協力的でない可能性がある」ことを理由に、
「日航は国際航空連合のワンワールドから脱退すべきではない。デルタ航空が戦略的投資家となる方が
好ましい」とした。
(ブルームバーグ Chan Sue Ling、Irene Shen)
ソースは
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100121/mcb1001210509022-n1.htm http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100121/mcb1001210509022-n2.htm