気候変動による被害が受けやすい途上国支援のため、タイ東北部の農民に干魃
(かんばつ)が発生したときに損害を査定せずに発動できる「天候保険」を、
損保ジャパングループが2月からスタートさせることが12日、わかった。
先進国の農業法人などを相手にした天候保険はあるが、「途上国」でかつ
「戸別農家」を対象にした点が画期的で、国際的にも注目を集めそうだ。
独保険会社のミュンヘン再保険の試算によれば、2040年には毎年1兆ドル
(約91兆円)の異常気象被害が予測されている。そのため温暖化に脆弱
(ぜいじゃく)な途上国への支援は昨年12月にデンマークで開かれた気候変動
枠組み条約第15回締約国会議(COP15)でも議題になるなど、国際的な
課題となっている。
今回の保険は、稲作やサトウキビ農業が盛んだが水資源に乏しく、雨水に頼らざる
を得ない状況下にあるタイ東北部・コーンケン県で売り出される。
現地では大半の農家が小口のローンを組んで種もみを購入。秋の収穫で現金を得て
返済するという自転車操業のため、干魃(かんばつ)などがあるとたちまち、
働き手が都市へ出稼ぎに行かなければならなくなるなどの問題が深刻化している。
天候保険は気温や降水量、積雪などの天候データをもとに、気温などの指標が
一定の条件を満たした場合に、保険金を支払う仕組み。例えば、スキー場経営企業が
積雪量が少ない場合、損害の査定なしで迅速に保険金を受け取れる。先進国では
盛んだが、途上国では気候データの集積が不十分であることや、保険の概念自体が
浸透していないことなどがハードルになって進んでいなかった。
今回の保険は、7〜9月の雨期の累積降水量が一定基準を下回った場合、自動的に
干魃に備えた保険金を受け取れる。東北部の農家の平均年収は4万円程度。
5千〜1千円の保険料で、指標を満たせば4万円〜1万5千円の保険金を得ることが
できる。
タイ東北部で実施するのは、同地域の降水量のデータが他の地域に比べてそろって
いたため。タイの政府系金融機関が農家への説明などを協力してくれることになり、
販売コストの抑制も見込めた。今後、他の地域や途上国でも販売を検討する。
損保ジャパンは「企業の社会責任の一環として試験的に始める。市場として
成立すれば他の地域にも応用できる」と最初は採算にこだわらずに事業を始める
考えを示している。
国連の気候変動枠組み条約事務局は「異常気象被害は公的資金だけでは対応できない
ため、リスク回避の仕組み作りが重要。タイでの取り組みが広がることに期待する」
と話している。
◎損保ジャパン(8755)
http://www.sompo-japan.co.jp/ ◎ソース
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100112/fnc1001122128016-n1.htm