【コラム】財政危機という“オオカミ”は必ず来る・・・東京大・大学院教授 伊藤元重 [09/12/05]

このエントリーをはてなブックマークに追加
3@@@ハリケーン@@@φ ★
>>1のつづき

 政府がこれだけの債務を抱えていても国債利回りが低いのにはいくつかの理由がある。
第一には、世界的な不況と金融危機の影響で、資金が安全な国債に逃げているからだ。
第二には、日本の国民の潤沢な貯蓄が国債を支えているということがある。
そして第三には、まだ国民の税負担率が比較的低い日本では、政府が大幅に増税をすれば
財政健全化をすることが可能であると市場が判断していることがあるだろう。しかし、
こうした条件は永遠に続くものではない。世界的な不況と金融危機が遠ざかれば、
資金がリスク資産に移動しはじめ、世界的に金利は上昇しはじめるだろう。日本の金利も
ある程度はそれにつられるはずだ。また、国債を支えている国民の貯蓄だが、高齢化が
進む中で日本の家計の貯蓄率が急激に低下し、いつまでも膨大な国債を支えきれるか
どうか分からない。そして増税の可能性であるが、今の政治状況の中では増税はなかなか
難しそうである。また、政府債務がさらに拡大していけば、増税でカバーできる余地を
超えてしまうかもしれない。デフレで政府の税収が落ち込んでいることも、財政状況を
さらに厳しくしている。
 結局、日本の財政は他の多くの国が経験したような財政破綻の道にひた走りに向かって
いくのだろうか。債務不履行にまで踏み切らなくても、国債の利回り急騰や、調整の
ための高いインフレ率への誘導という事態に陥るのだろうか。そうなれば、経済は
大混乱だろう。一部には、国債の価格暴落が起き、国民が驚いて、増税による財政健全化
が政治的に通りやすくなる環境になるまで、今の状況は続くという見方もある。しかし、
その時点まで増税を待っていて間に合うのだろうか。新政権はミクロレベルでの歳出
見直しには熱心であるが、マクロレベルでの財政健全化シナリオを早く出してほしいものだ。
(いとう もとしげ)

-以上-