兵庫県新温泉町居組と鳥取県岩美町陸上を結ぶ自動車専用道路「東浜居組道路」(3・5キロ、2車線)が
開通して24日で1年が経過した。開通により但馬から鳥取方面への救急搬送の迅速化や通勤の利便性が
向上するなどの効果が指摘されている。一方で、鳥取県側の利用が但馬と比べて限定的となっており
「両県の間には道路への認識に差がある」との指摘があった。
◆負担軽減
同道路は「鳥取豊岡宮津自動車道」(鳥取市−京都府宮津市、約120キロ)の一部。急カーブが多く交通の
難所として知られた旧国道178号「七坂八峠」のアクセスを改善しようと、兵庫、鳥取の両県が約115億円を
投じて整備し、昨年11月に開通した。
同道路の兵庫県側(1・9キロ)を管理する県新温泉土木事務所が開通直後に行った調査によると、同道路の
1日当たりの交通量は約2300台。同事務所は、旧178号を利用していた通勤者や物流トラックなどが
そのまま移行したと分析。所要時間の短縮とともに、土砂災害や積雪による影響も少なくなることから
「心理面でもドライバーの負担を軽減する効果があったのでは」と推測している。
◆救急搬送も短縮
鳥取方面への救急搬送にかかる時間が短くなった。美方広域消防本部によると、公立浜坂病院(新温泉町
二日市)から鳥取県立中央病院(鳥取市)へ救急車で転院搬送する所要時間は平均約36分。整備前に比べ
約4分の短縮が見られた。
さらに「以前は患者の負担となるので七坂八峠は可能な限り避けていた」(同本部)という事情があり、
より所要時間のかかる国道9号経由で搬送していたため、一分一秒を争う救急の世界では大きな時間短縮と
なっている。現在、東浜居組道路を利用した救急搬送は月平均で20件ほどあり、町内の救急搬送のほぼ
3分の1を占めているという。
◆鳥取への流入懸念
開通前に懸念されていたのが、鳥取方面に経済活動が集中して地域が衰退する「ストロー現象」。現状に
ついて、浜坂町商工会(同町浜坂)の守山康博会長は「影響がゼロとはいえないが、当初心配していた
ほどではない」と胸をなでおろす。
また、同町商工観光課も「地域消費が極端に落ちたということはないようだ」と分析する一方、同道路に
ついて鳥取側と但馬側で認知度に大きな差があることを指摘。「鳥取からこちらに来てもらえるようPRして
いかなくてはならない」と、往来が一方的となることを警戒する。
鳥取県東部総合事務所県土整備局は、同道路の整備の前後で「全体交通量は約2割増えており、地域間の
交流が活性化されたようだ」と効果を強調する。しかし、県境を接している岩美町の担当者は「どちらかというと
通勤や買い物、病院利用などで但馬から鳥取方面に来る人のほうが多いようだ」と明かしていた。
▽ソース:日本海新聞 (2009/11/25)
http://www.nnn.co.jp/news/091125/20091125036.html