11月19日(ブルームバーグ):走行中に二酸化炭素(CO2)を一切排出しない究極の
エコカーとして注目が高まる電気自動車(EV)は、エンジンを搭載しないため従来に比べ
部品点数が大幅に減る。普及が進めば自動車部品メーカーにとっては死活問題につながり
かねない。各社は新規事業の開拓に必死だ。
自動車エンジン用タイミングチェーンで世界トップを争う椿本チエイン。日本メーカーが
国内で生産する車の8割以上で何らかの形で使われている同社の部品が、7月に発売された
三菱自動車の新車から消えた。国内初の量産型EV「i−MiEV(アイ・ミーブ)」だ。
EVにはエンジンの動力を車輪に伝えるチェーンは必要ない。
「EVには当社の従来の技術をそのまま転用できる部分がほとんどない」。売上高の約3割を
占める自動車部品事業を統括する藤原透取締役は話す。同事業の製品はほぼすべて
エンジン用で、「電気自動車用ではまったく新しい技術を開発しないといけない。アイディアが
なければ仕事にならない」と危機感をにじませる。
自動車調査会社カノラマのアジア・ディレクター、宮尾健氏によると、自動車で最も部品が
多く使われるのはエンジン周りで全体の30−40%程度を占める。そのエンジンがなくなるEVの
普及を見越して各部品メーカーは知恵を絞り、新規事業の開拓に取り組んでいる。
●「トライアル」
椿本チエインの藤原氏によると、エンジンとモーターを併用するハイブリッド車用などの部品
受注は絶好調。「足元は非常に忙しい。今後、3年や5年でわれわれの事業がものすごく大変
なことになるとは思っていない。10年もすればEVの普及はかなり進むだろうが、それでも
ハイブリッドの方がまだ比率は高いだろう」と、焦りはない。
ただ肝心のEV向けの新規事業開発は、自動車部品事業部でプロジェクトを組んで「一生懸命
トライアルしている」ものの、「まだ実際に電気自動車に載るというところまでいったものは
何もない」という。
ベアリング(軸受け)世界シェア3位NTNは、比較的早い段階から対策を進め、タイヤの
ホイールに駆動源のモーターを内蔵させる「インホイールモーター」などEV向けの技術の
開発に既に着手している。
NTNではこの開発に先立ち、他社からバッテリーや車体を調達して自前のEVを試作するほど
熱を入れた。EV向け部品に関する特許もいくつか申請したという。鈴木泰信会長は「軸受けから
離れて世の中にどんな貢献ができるか、どう生き延びていくかという考えがあった。開発を通じ、
EVに関するノウハウは取得できたと思う」と説明する。
NTNではEV向けの開発のほか、風力発電や航空機、鉄道車両用など産業機械分野を強化して
売上高に占める割合を現在の4割程度から、13年度までに自動車と並ぶ5割まで増やす計画で、
事業の多角化に努める。
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ソース:bloomberg [09/11/19]
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=aso7GKsR71nw