米航空機大手ボーイングの次世代中型旅客機787(ドリームライナー)第2生産
ライン建設計画をめぐり労使間の話し合いが難航する可能性が出ている。
同社は先月末、「ジェットシティ」の愛称で呼ばれる現在の生産拠点、ワシントン州
シアトルに加え、サウスカロライナ州ノースチャールストンに第2工場を建設すると
発表した。2年半余りに及ぶ同機の生産の後れを取り戻す狙いだ。同社は第2工場が
サウスカロライナ州で数千の新規雇用を生み出すと説明した。しかし、ボーイングの
中心生産拠点でワシントン州シアトルの政治家や企業経営者、労働組合関係者らを
激怒させた。
というのも、同社がサウスカロライナ州を選んだ理由の一つは労働組合の力が弱い
ことが理由とみられているためだ。同州は労働組合加盟の有無にかかわらず自由に
労働することを保証する労働権法を採用。労働者は組合への加盟を強制されない。
これに対し、ワシントン州は同法を採用していないため、過去20年間で4回のストが
起きた。
国際機械工・航空宇宙産業労働者組合(IAM)751支部のトム・ウロブルスキ
委員長は、労組がストを行わないことを保証する10年契約を提示したがボーイングは
ほとんど関心を示さなかったことを明らかにした。「ボーイングがわれわれとの交渉を
サウスカロライナ州から助成を引き出すための切り札として利用したことがはっきり
した」としている。
ジェフリーズのアナリスト、ハワード・ルーベル氏は「世界の航空機市場における
労使の現実を反映している。数年前には考えられないことだ。昨年末のストライキで
経営状態と顧客との関係が悪化したことから、新しい生産拠点が必要だと判断したの
だろう」と述べた。2008年末のストライキは2カ月におよび航空機105機の
生産が滞った。
ブロードポイント・アムテックのアナリスト、ピーター・アーメント氏は「12年に
開催されるIAM傘下の751支部との交渉が、新工場建設をめぐって大荒れになる
ことは間違いない。しかし経済効果は一からラインを作るリスクをしのぐほど大きい」と
説明した。同氏は新ラインの設立に伴うコストを15億ドル(約1350億円)、
昨年のストライキで生じた損害額を20億ドルと見積もっている。
ノースカロライナ州の工場誘致策の下、ボーイングはインフラや設備、訓練施設の
建設費用の助成や減税措置を受ける。労組はこの総額が約1億7000万ドルになると
見積もっている。それと引き換えにボーイングには工場建設に7億5000万ドル以上を
投じ、7年間で少なくとも3800人の正規従業員を雇用することが求められる。
第2工場をワシントン州内に建設するようロビー活動を行っていた非営利政策グループ
「ワシントン・ラウンドテーブル」のジョン・スタントン会長は将来の雇用のために
ワシントン州は税率を引き下げ、労働者に有利な規則を見直す必要があると指摘。
ボーイングの飛行テストセンターの近くで自動車整備工場を営む男性は顧客の40%が
同社の従業員だとした上で「ボーイングは労組に我慢できなくなったんだと思う」と話した。
(ブルームバーグ Peter Robison、Susanna Ray)
ソース:FujiSankei Business i.
http://www.business-i.jp/news/flash-page/news/200911110095a.nwc