【コラム】情報通信のガラパゴス化現象…“孤島”に取り残されつつある日本の通信(ITpro)[09/09/28]

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1依頼@台風0号φ ★
 「まず日本で成功しないことには,世界市場での成功はない」---。

 「いや,最初から世界を目指さないと,世界市場では成功しない」---。

 これは,2009年5月中旬に開催された「IT国際競争力研究会」(超ガラパゴス研究会)でのやり取りだ。
少々乱暴かもしれないが,前者は通信事業者に根ざした発想,後者はコンピュータ業界や半導体業界では
当たり前の発想と言い換えられる。

 通信事業者は,国境の存在を強く意識する。基本的に各国の政府から事業免許を受け,まずは自国内の
ユーザーがサービスの対象だ。

 一方,コンピュータ業界には,当初から世界市場を目指す企業が多い。彼らの行動指針は,たくさん売れば
売れるだけ商品に占める開発費の割合は小さくなり,商品の価格は安くなる,という発想に基づいている。

 “ガラパゴス化現象” の代名詞のように言われている日本の携帯電話は,通信業界の考えが支配的で,
コンピュータ業界的な発想が欠けていた。例えば,そもそも日本語を使う人しか対象にしていないため,
多言語への対応は無い。一方,米アップルのiPhoneは,パソコンと同じように発売当初から多言語対応していた。

 国内を中心にサービスを提供する通信事業者も,世界的な視野を持たないといずれツケが回ってくる。
例えば,NTTドコモは,端末メーカーに対して開発費の一部を負担することを決めた。国内市場に注力する
メーカーが市場の縮小に直面,端末の高機能化に伴う開発費の高騰に耐えられなくなったからだ。販売台数に
かかわらず,開発費は同じようにかかる。国際市場で端末がたくさん売れていれば,今回の支援は無くて
済んだかもしれない。

 一方,「日本が進んでいる」と慢心していると,世界の動向に追い越されてしまうこともあり得る。例えば,
現在のWebブラウザはパソコン向けも携帯電話向けもHTML 5対応に向かっている。しかし,国内の携帯電話が
標準搭載するブラウザは,HTML5とは別の独自の道を歩む。HTML 5に対応するiPhoneなどに比べて表現力で
劣っている。

 かつて国内の携帯電話は,Javaにいち早く対応,販売後にアプリケーション・ソフトウエアを追加できるように
なり,端末の多機能化・高機能化が一気に進んだ。しかしパソコンとモバイル機器の高機能化が同時進行する
HTML 5の時代に,国内外の立場は逆転しかねない。

 これまで,国内外の仕様は対峙しがちだった(図1)。しかし,今のように技術の変化が激しい時代に,
基盤技術から上位のサービスまでのすべてを自分たちだけで手掛けようという発想には無理がある。むしろ,
基盤技術はできるだけ共通化して世界中のリソースを活用,その上に日本らしさをいかに残していくかという
発想が必要ではないだろうか。

※ 図1の画像
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090916/337291/zu01.jpg

▽ソース:ITpro (2009/09/28)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090916/337291/
記事は>>2以降に続きます。