製紙業界が、中国の古紙リサイクル率向上に乗り出した。製紙各社が加盟する日本製紙連合会
(製紙連)などが中国の業界関係者を日本に招き、研修などを行ってノウハウを“伝授”する取り組みを
始めた。段ボールや商品パッケージ用紙の原料となる古紙の回収率は日本が約75%(2008年)と
世界最高水準なのに対し、中国は40%程度にとどまっている。製紙業界としては中国の古紙市場を
拡大して輸出急増を抑え、国内価格を安定させたい狙いもある。日中が古紙回収で協力するのは
初めてで、「リサイクルや資源の共有化を進め、環境負荷低減に貢献する」(製紙連)新たな環境協力の
モデルともなりそうだ。
≪研修生受け入れ≫
両国の協力は、昨年10月に初参加の中国を含むアジア9カ国・地域が集まり、大阪で開かれた
紙・パルプに関する国際会議での合意に基づいて始まった。まず製紙連が主体となり、今月2日から
11日まで中国の製紙会社や古紙回収業者など27社・団体の関係者を日本に招待。古紙に関する
政策や自治体などによる回収法、回収業者の実態、製紙会社の調達法などについて“集中講義”を
行ったほか、日本製紙グループ本社の石巻工場(宮城県石巻市)や横浜市の資源回収センターも
見学した。渡航費用などの経費は全額、日本側が負担した。
古くから「チリ紙交換」などの回収システムがあり、分別回収が進む日本に対し、経済発展を背景に
紙の生産が急拡大してきた中国は古紙回収システムの整備が追いつかずにいる。
そのため、木材パルプとともに古紙も米国や日本からの輸入に頼っているのが現状だ。
日本の古紙市場は、08年で約1900万トン。うち輸出量は約350万トンで、8割以上が中国向けだ。
かつて中国には日本でだぶついた分を輸出しており、結果的に日本の古紙価格を下支えする“調節弁”の
役割を担っていた。しかしここ数年は、中国の段ボールメーカーなどが生産能力を増強し、
日本の高品質な古紙を競って買い求めたため価格が高騰。
昨秋ごろには段ボール古紙価格が1トン当たり約1.8万円と、04年比で2倍近くに上昇し、
日本の段ボールメーカーなどの収益を圧迫する要因にもなっていた。
≪くすぶるリスク≫
今年に入って、日中ともに古紙需要がしぼみ価格も段ボール古紙で1.5万円程度と落ち着いてきたが、
先行きの“中国リスク”の懸念は残っている。ある製紙会社関係者は「中国の業界情報が少なすぎる」と
話す。日本側が費用を負担してまで協力する背景には、回収ノウハウ提供と同時に情報収集を強化
することで、先が読みづらい中国の需要動向に左右されず、古紙を安定した価格で調達したい製紙業界の
意向が反映されている。
製紙連などは今後も中国との連携を深めるだけでなく、古紙輸出先であるタイやベトナムなどにも
同様の支援を行っていく考え。別の製紙会社関係者は「日本式の回収システムが広まれば、製紙会社、
回収業者ともに、(現地で)ビジネスがしやすくなる」とみており、国際協力関係の強化が
製紙関連会社のアジア進出を加速させる可能性もありそうだ。
ソースは
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200909140033a.nwc “日本と中国の古紙回収率”というグラフは
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200909140033a2.jpg