コンタクトレンズ大手のメニコン(名古屋市)が、酵素(エンザイム)を使って稲わら、鶏ふんなどを処理する
新分野に挑んでいる。エンザイム事業部を率いるのは洗浄液などの開発部署にいた亦野(またの)浩部長
(46)。開発者スピリットを大切にする社風に後押しされ、7年目にして事業を軌道に乗せつつある。
亦野部長は1993年から2年間、米カリフォルニア大デービス校へ留学。この時、微生物研究の世界的権威の
教授から、微生物ビジネスの将来性を学び、帰国直後、洗浄液の製造過程で植物繊維の分解能力が
高い酵素を生み出す新種菌を発見した。
出身はコメどころ新潟県。かねて食料問題に関心があり「この特性を農業分野で生かしたい」と新規事業を
提案。当初は社内に場所がなかったため、地元の大学で間借りしながら研究を続け、2002年、正式に事業を
立ち上げた。
05年に第1弾として稲わら分解促進剤「アグリ革命」を発売。収穫後の田んぼに散布すると、翌春には
自然放置の倍の6割まで分解が進むのが売りだ。異分野参入だけに販路開拓に苦しんだが、新潟県の
農協から導入が広がり、今年新たに福島県でも採用が決まった。
06年にトヨタ自動車と共同で発売した畜ふん分解促進剤「レスキュー45」も新たな展開がみえてきた。
鶏ふんを処理するだけではなく、有機肥料に再利用する事業が注目され始めている。従来の処理では
成分が安定せず、安価な堆肥(たいひ)にしかならなかった。それが「レスキュー」と独自に開発した高温菌で
発酵させれば窒素が豊富な良質な肥料になる。
おからなどの食品残さを酵素を使って発酵させ、飼料として再利用し、販売するビジネスも実証実験が
進んでおり、これらが本格化すれば、売上高は09年3月期の5000万円から、13年3月期に9億円へと
飛躍的に伸びる見通し。
分解して“なくす”から“再利用”するビジネスへ。歯車は着実に回り出した。「赤字続きの研究でも黙って
見守ってくれる社風だから、ここまでやってこられた。次は酵素の力で電気を“生み出す”バイオマスエネルギー
事業に挑戦してみたい」。さらに1歩先を見据える。
▽ソース:中日新聞 (2009/09/11)
http://www.chunichi.co.jp/article/economics/news/CK2009091102000150.html