★急成長する中国自動車市場、外国メーカーはブランド戦略に苦戦
世界最大の自動車市場となった中国は、2009年の国内販売台数が2000年から
500%増となる1000万台超と予想されている。自動車メーカーにとって高い成長率が
魅力的な中国市場だが、競争が激しく消費者の好みも変わりやすいため、外国
メーカーはマーケティング面で苦戦を強いられている。
中国BMWのマーケティング担当バイスプレジデント、ヨッヘン・ゴラー氏は「中国
市場に進出する非常に多くの外国ブランドが、潜在顧客に過剰な情報を流し
過ぎており、そのせいでブランドや商品のメッセージを理解してもらうことが
ますます難しくなっている」と述べた。
BMWは、中国国内でラリー大会を主催するなど「実験的マーケティング」手法を
採用し、高級車市場で差別化を試みている。また、口コミ効果を狙ってBMWオーナー
向けのソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)も開設しているが、業界の
専門家からは、中国の消費者にブランドロイヤリティはほとんどないとの声が聞かれる。
自動車業界向けコンサルタント会社CSMワールドワイドのアナリスト、Huang Zherui氏は
「中国の多くの買い手にとっては価格が依然として一番の懸案事項であるため、自社
ブランドの差別化に成功できている外資系自動車メーカーは少ない」と指摘。「ここ
中国では、顧客ロイヤリティはまだほとんど知られていない概念で、ちょっとした
値下げで顧客がライバルブランドに簡単に流れてしまうこともある」と述べた。
西側先進国でブランドイメージを確立しているトヨタ自動車やホンダ、独フォルクス
ワーゲンも、わずか10年前まで自転車が交通手段の主役だった中国では、顧客
属性の大きな違いからブランド戦略に苦戦している。
ブランドの資産的価値形成には、環境が重要な役割を果たすことも少なくない。
米国では最盛期を過ぎたとみられ、販売台数も落ち込んでいる米ゼネラル・
モーターズ(GM)GM.ULの「ビュイック」だが、中国では初代首相の周恩来が
愛用していたイメージなどが浸透し、一流ブランドとして大きな成功を収めている。
すでに200万台を超える実績を誇るビュイックの中国での販売台数は、依然として
2ケタの伸びを示している。
GMは中国の消費者の好みに合わせるため、「キャデラック」などのセダンの後部
座席スペースを大きくしている。中国の富裕層は運転手付きの車の後部座席に
乗ることを好むためで、高級スポーツ車メーカーのポルシェも今年、中国市場に
4ドアセダンを投入した。
今年の中国の自動車市場については、当初は景気後退を背景に悲観的な見方も
あったが、政府による多額の支援策が奏功して需要が大きく回復している。多くの
工場が生産を絞っていたこともあり、需要の急回復で新車の納車が何週間も
待たされる状況も出ている。
業界の専門家らは、中国では自動車を初めて購入する層が増えるとともに、富裕層や
アッパーミドル層が2台目を所有するようになるため、向こう数年は販売台数が2ケタで
伸びると予想する。
>>2に続く
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11397320090908 >>1の続き
中国の消費者が購入する自動車の多くは、吉利汽車や奇瑞汽車、華晨中国汽車と
いった安価な国産ブランドになるとみられる。BMWやアウディの高級車が
30万─70万元(約400万─950万円)で売られている一方、奇瑞汽車「QQ」の
販売価格は3万元を下回る。
世界の多くの地域でスポーティーかつ洗練されたイメージを獲得しているBMWだが、
中国では新興富裕層の第1世代が出現し始めた1990年代半ばに市場進出した
せいもあり、どちらかと言うと派手なイメージでとらえられている。こうした「成り金」
イメージの良し悪しはともかく、そのおかげで中国はBMWにとって最も成長力が
高い市場の1つとなっている。同社の2008年の中国での販売台数は、前年比
28%増の6万5822台だった。
一方、フォルクスワーゲン傘下の高級車アウディは、最近まで外車として唯一の
公用車だったこともあり、「A6」が政府高官の間で人気となった。こうした政府の
「お墨付き」イメージは、政府関係者とのコネクションを大事にする中国の新世代
ビジネスエリートの間でアウディ人気を高めることにも一役買っているという。
2009年 09月 8日 15:03 JST