【コラム】プロジェクトの進め方…欧州「カメ型」の長所発見−東京大教授・坂村 健氏[09/07/05]

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1依頼@台風0号φ ★
 最近ヨーロッパに行くことが多い。いろいろな機器へ組み込むコンピューターの技術と、その将来形としての
「ユビキタス・コンピューティング」技術が、今後のEU(欧州連合)の発展のために必要−−ということで、
大きなプロジェクトがいくつか進んでおり、その委員会に専門家として呼ばれるからだ。

 そういうEUでのプロジェクトにつきあって感じたことがある。最初は「頭でっかちな議論ばかりしていないで
早く手を動かしたら」と、思うことがよくあった。心の中では、これだから米国や日本に後れを取るんだろうと
思っていた。それが、回が進むにつれて考えが変わっていく。

 こちらから見るとあまりに初歩的な議論をしていても、次に行くと参加者のレベルがちゃんと上がっている。
それを続けていて、ふと気がつくと着実に議論は深まっている。公開シンポジウムなどで、「ネットワークアドレスと
固有IDの違い」といった高度な質問が会場から出たが、隣の席の文系官僚が回答した。しかも意味論的な
問題まで含めた理解の上で、きちんと答えたのには驚いた。

 「ウサギとカメ」で言うと「カメ的」というか、遅くても着実に進んでいる。

 大規模なプロジェクトでは研究と概念形成とEU域内での共通意識の確立自体が一大プロジェクト。実施に
あたってはこうした方がいいという後継プロジェクトの設計を含む立派な報告書が作られ、それが皆に
認められた形で、やっと具体的な研究開発のプロジェクトが始まる−−つまり手が動き出す。

 例えばEUにおけるユビキタス・コンピューティング技術に関する前段階プロジェクトのCASAGRAS
(カサグラスと呼ばれる)が、08年1月末から開始され、最終報告発表予定は09年10月で、ほぼ2年がかり。
つまりEUでは「ユビキタス」について今までずっと哲学議論が続いており、来年からやっと手が動き始める
ということだ。

 ある意味、日本以上の「お役所仕事」である。しかし、とにかく全体図を整理するのがうまい。日本では
いまだに「ユビキタス」という言葉は知っていても、それがどういうものかについてはあいまいなイメージだけで
議論している人が、官僚や経済人、さらには技術専門家にすらいる、と感じることが多い。会議でずっと前に
説明したのに「振り出しに戻る」で徒労感に襲われることもしばしば。しかし、EUの報告書なら、きちんと読めば
まず大丈夫。

 さらに言えば「ユビキタス」をEU的に咀嚼(そしゃく)して、新しいネーミングを与えているところもうまい。
EUとして目指すものを明確にするとともに、米国とも日本とも違う「これがEUの新しいプロジェクトだ」と示す
効果がある。


▽ソース:毎日.jp (2009/07/05)
http://mainichi.jp/select/opinion/jidainokaze/news/20090705ddm002070086000c.html
記事は>>2以降に続きます。
2依頼@台風0号φ ★:2009/07/07(火) 22:35:22 ID:???
>>1の続きです。

 新しいネーミングは「IoT」。「Internet of Things」の略で、「モノを結ぶインターネットのような次世代環境」と
いう意味であり、今皆が使っている「インターネット」とは別物だ。「間違った薬を飲もうとすると、その薬から
携帯電話に『私を飲むと危ない』と電話がかかってくる」というイメージ説明を、私が最初のころ委員会で
していたのだが、それを素直にネーミング化した感じだ。

 新しい技術分野への取り組みで、米国は論文よりもビジネス企画が先に出てくる。そこに多額の投資が
機動的に集まる。実は民間より国防総省系の政府研究資金が大きいのだが、こちらはこちらで国防の
名のもとに独断専行的で、やはり素早い「ウサギ型」。

 それに対して欧州のやり方は、手を動かす前に関係者皆でまず哲学議論。コンセプトを共有化してから
要件定義に入る。そして具体目標に細分化し個々のプロジェクトを起こし、さまざまな政府機関や民間から
プールした予算を分配してつぎ込む。確かに、取りかかるまでは遅いが、取りかかってからは皆が理解
しているため立体的にプロジェクトが進む「カメ型」。

 情報通信分野では進歩が速いので、基本的には米国方式の方がいいと思うが、社会的な構造変化を
含み哲学レベルでの合意形成が必要な分野など、欧州方式の方がいい分野もあるのではないかと思い
始めたのが、私にとっての最近の時代の風だ。「ユビキタス」技術を生かすにはそれを社会インフラに
するしかないが、哲学議論をパスする日本はそこが弱い。

 確かに欧州は手が遅い。EUの報告書でも、私の研究所が世界でも突出して先進的実証をやっていることが
何度も言及されている。しかし、日本では一部が突出しても周辺の動きが鈍い。なぜか「〜陣営」で分かれて
競わないと先にも進まない。だから、縦割りで閉じた応用のみで展開がない。

 日本の仲間内でさんざ磨き上げた高度な技術は、それがタコつぼ的であるからこそ、最後は米国で
「他を撃ち殺して」確立した実質標準や、欧州で「議論と調整により」確立した公式標準に駆逐されることになる。

 日本のやり方はいろいろな意味で米国ウサギと欧州カメの中間。それがいいとこ取りなのか、それとも……。
なかなか悩ましい状況である。

−以上です−
3名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 22:41:01 ID:Sr9NYZU3
的確すぎてコメントしようがないな

4名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 22:42:40 ID:ZHhQTR+k
ユビキタスって言葉、既に何処か懐かしさすら感じる。
5名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 22:45:55 ID:Uz4GI51U
どげんしたらよかとですか
6名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 22:46:09 ID:zGyv07IS
確かにヨーロッパはみんなそうだな。どこの研究所でも
延々と方法論ばっかりやっていて、「案ずるより産むが易し」
などと言っても理解されない。
7名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 22:55:11 ID:ZPMF0G2l
結局何がいいたいのかよく分からん
空を見上げたら青かった…
だからお前はどうしたいんだ
8名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 22:57:48 ID:TCWTNo1M
> 最初は「頭でっかちな議論ばかりしていないで
> 早く手を動かしたら」と、思うことがよくあった。心の中では、これだから米国や日本に後れを取るんだろうと
> 思っていた。

ソフトウェア関係だけど、アメリカもそんな感じだけどな。
最初に十分時間かけて議論して、決まったら一気に作業するって感じ。
9名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 23:03:46 ID:y4037lTG
日本だと上司の「能書き垂れるな」の一言で終わっちゃうからな。
10名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 23:18:36 ID:MZe8PkmU
日本はアニメでも作っていればいいんだよ(´・ω・`)
11名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 23:25:01 ID:bZgkhYjL
坂村はもういらない
12名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 23:25:34 ID:WqGdwQOj
日本で、いわゆるIT化が遅れてるって言われるのは、要するに行政と医療だろ。
議論のレベル以前に、既得権益の問題だと思うが。

哲学とかそんな大層な話じゃない。
13名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 23:47:01 ID:L6q7IOVa
日本は改善技術で後から追い抜くのが得意
基本の構築は他人まかせ
良い物に乗り移る
ある意味ネットサーフィン
いいとこ取り
14名刺は切らしておりまして:2009/07/07(火) 23:54:58 ID:nEJLwylB
とりあえず、イタリア人を使って、仲間割れさせろ!
15名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 00:09:46 ID:CLCoyd/K
映画では、アメリカでは徹底的に脚本磨いて下準備して一気に取るけど、日本は監督やカメラマンの現場の行き当たりばったりのインスピレーションで取るよね
16名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 00:20:32 ID:E4WBqOpU
要約すると、
何かを始めるときは一部の専門家が決めた仕様でやるか、
プロジェクト全員で仕様を決めるかだな。

専門家だけで決めるのなら下準備は必要ない
が、全員で決めるとなると下準備が大変ってことだ。
17名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 00:23:43 ID:aF9BilLd
こういうのは欧州と中国が対極にあって間に日本やアメリカが挟まる感じかな。
18名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 00:28:40 ID:GFo6dM0a
日本が世界に取り残されるのは、対話の窓口が無いから、ということを言っているのでは?
優れた技術等があっても、それを海外に広めて世界標準にする機関や人材がいない
ケータイなんかの通信技術や、工業規格会議とか、そんなので数年前?から言われてたような
19名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 00:31:36 ID:WcIYbWL4
> 「ネットワークアドレスと固有IDの違い」
これを文系が答えられるのは確かに勉強してると思う。
20名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 00:43:30 ID:5Q4c6Y6d
>>15
それは映画の経済規模が違うところからくるもんだな。
21名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 01:21:20 ID:JkeiLbMd
欧米のやる事が何でも正しいと盲信し、右往左往するのはやめたほうがいいな
この世代の悪いクセだよ
22名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 03:42:53 ID:hcuDyJOS
流石東大教授、言うことに重みがある。
しかし残念なことに、変態新聞に載せたがゆえにその重さは半分ぐらいになってしまった。
まぁ、結局日本の政治家は「なんとなく」でいろいろやってるもんだから国民そのものも「なんとなく」レベルしか育たなくなってしまったのでは。
23名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 13:12:49 ID:AvYo6KR7
>>15
ドラマでもあるな
あちらの脚本は多数の人間が構成に参加し、細かい設定を作り上げる

>>1
>会議でずっと前に説明したのに「振り出しに戻る」で徒労感に襲われることもしばしば。

これは何の分野でもあるだろう
ここをクリアできたら何の分野でも効率よく機能するんだろうけどね
24名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 14:23:24 ID:BeyUNIN2
>>3
うむ。
25名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 14:34:51 ID:E4EHmWxb
>>16
それプラス、プロジェクトを管理する側がそのプロジェクトをどのくらいわかってるか、
わかろうとしてるかの違いもあるかと。
前者だと管理側も何をしようとするか理解してるから、それにあわせて動いてくれるが、
後者はプロジェクトを管理する側は予算やスケジュールしか見ないで動くから、
何かあったときに管理側と専門家で対立して対策・対応が遅れる。
26名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 14:39:23 ID:fuHpzh+f
俺、もろ欧州型開発にはジャストフィットだわ。。。
某アイデアで高価で前準備に時間が掛かる(つっても1ヵ月2ヵ月)
だが理論上は公差を無視できるクランク方式と
安価で素早く手に入るベアリング方式で議論したけど
パワーバランス(声の大きさ?)で負けてベアリングにされて、今になって精度が出ないで
あほみたいに工数が掛かってるし結果も付いてきてない
俺の知る限りじゃ、今、時間的余裕を見越して石橋を積み上げる様にきっちり階段を抑えて
研究開発結果がついてきているのは…トヨタの研究所位だな
その1か月2か月、お前は遊んでんのかよ?とか寝ぼけた事言われた日にゃあ…
あっそーかよ、で一気にやる気無くすわな…
27名刺は切らしておりまして:2009/07/08(水) 17:42:56 ID:BeyUNIN2
ユビキタスコミュニケータとucodeが出てきます。

NHK高校講座 | 地理 | 第12回 産業と生活 流通・貿易と情報化
http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/chiri/archive/chapter012.html
28名刺は切らしておりまして
>>26
そういう議論は亀だろうとウサギだろうとやってるよ。エンジニアリングの次元
君のところがやってるようにね。>>1の亀方式ってのは哲学的な部分のことだ