既存の薬の用法・用量を見直すことで新たな効果が確認されれば特許対象とする――。
政府の知的財産戦略本部は、新たな医療特許戦略を打ち出す。成分が同じでも、
服用法を見直すことで副作用のリスクを減らすなどの新規性が認められれば
特許として保護し、企業に研究開発投資を促すのが狙い。近く決定する09年度の
推進計画に盛り込み、早ければ年内にも特許法の審査基準を改定する見通しだ。
たとえばある骨粗鬆症(こつそしょうしょう)治療薬の場合、患者はこれまで、
毎日薬を服用する必要があった。この薬を飲むと、食道炎の副作用予防のために、
服用後30分は横になれないが、成分は同じで7回分の分量を1回にまとめても
副作用が変わらない薬が開発された結果、週1回服用するだけでよくなり、
患者の負担は減った。こうしたケースを今後、特許対象にするよう提言する。
特許を申請する場合、医薬品メーカーはまず、治療に効果が認められる物質の特許を
申請し、取得する。その後、薬事法にもとづく製造販売承認の段階で「100ミリ
グラムを1日2〜3回2錠ずつ」といった用法・用量が定まる。
今回の計画は、たとえば同じ成分で「50ミリグラムを1日1回1錠」の薬を
つくった場合、これも「新薬」として特許申請の対象にするというもの。
特許期間は通常20年、最長25年とされるが、「100ミリ」の特許を取得した
メーカーが特許期間の切れる前に、新たに「50ミリ」の特許を取得できるように
なる。物質の特許期間である20年を過ぎれば、他メーカーも参入可能で、安価な
後発薬と、服用法に工夫を加えた先発薬が、市場で競合することになる。
日本の特許制度は、医療機器や医薬品の発明は「物の発明」として特許対象とする
ものの、手術や治療といった「医療方法」は対象外。
欧州では07年12月に「2000年改正欧州特許条約」が発効、医薬の新たな
効能発見は「方法としては保護しないが、物の発明として保護する」とした。
今回はこれにならい、物質としては同じでも用法用量が違って効き方が異なる場合は、
「物の発明」と解釈できると判断、特許対象を広げようとするものだ。
特許庁関係者は、「用法用量の工夫で服用回数などを減らせれば、患者の生活の質、
利便性の向上につながる。また、新たな特許として保護することで、製薬業界が
別の新薬の研究開発を進める余力も広がる」と期待する。製薬業界側も「ようやく
商品化した新薬の研究に、さらに力を注ぐことで、患者にとって負担のより少ない
薬を提供できるようになる」と話している。
◎ソース
http://www.asahi.com/politics/update/0620/TKY200906200077.html