子ども用自転車をレンタルしている自転車店が、名古屋市瑞穂区にある。
子どもの成長ですぐに小さくなるけれど、捨てるのはもったいないという
親の悩みに着目し、4年前に50台から始めた。年間3千円ほどという安さも
魅力になって県外からの客も増え、今や400台にまで拡大した。量販店の進出で
減り続ける「街の自転車屋さん」の生き残り策としても注目されている。
同区八勝通1丁目の「オオタサイクル」。レンタルは12インチから24インチまでの
400台をそろえているが、現在9割の360台が貸し出し中、というほどの人気だ。
レンタル料は車種によって異なるが、半年間で1200円から。ほかに返却時に戻って
くる保証金5千円が必要だ。
発案したのは、店主の太田正宏さん(62)の妻・節子さん(59)。90年代の
バブル期には、店で販売した子ども用自転車のうち、顧客から「子どもが大きくなって
乗らなくなった」と年間100台程度を引き取っていた。障害者授産施設のバザー用に
提供するなどしていたが、それも飽和状態になり、廃棄処分になることも多かった。
「もったいない。何とかできないか」
そう考えていたところ、店のホームページを作成する業者から提案されたのが、
レンタルだった。
地域に根付いた自転車屋さんとしての細やかな気配りも売り。例えば、サイズは
ぴったりだが、子どもが好きなキャラクターでは無い自転車があると、ベルだけ
好きなキャラクターに付け替えてくれる。サイズが合うかどうか試乗ができ、
乗り方指導もしてくれる。「小回りがきく街の自転車屋さんならではの対応ができる」
と節子さん。
顧客のほとんどは口コミ。特に親の費用負担が重い双子が多く、岐阜市など県外からも
訪れるという。
瑞穂区内の主婦牧野奈美子さん(38)は8歳の長男、長女の双子用に自転車を借りて
いる。3年前に初めて借り、成長に合わせて借り換え、長男は3台目、長女は2台目に
なる。牧野さんは「双子だと2台必要なので、買うと大変。子どもの成長に合わせて、
乗り換えできるのが便利」と話す。
量販店の進出で減る一方の街の自転車店の生き残り策にもなる。愛知県の商業統計に
よると、自転車小売業の事業所数は99年の923から07年に723と大きく減少
している。加えて少子化で子ども用の自転車も売れなくなっている。12〜16インチ
の幼児用の国内出荷台数は85年の42万台から08年の18万6千台と半分以下だ。
また、名古屋市では自転車を捨てる場合には500円の粗大ごみシールを購入しなけれ
ばならない。オオタサイクルでは、無料で引き取るため、仕入れ値はゼロ。メンテナンス
など手間はかかるが節子さんは「すき間産業で、商売として成り立っている。ごみ減量
にもつながる。同じ取り組みが広がってほしい」と期待している。
問い合わせはオオタサイクル(052・831・5004)。
ホームページ(
http://www.oota-cycle.jp/)では、現在借りることのできる
自転車の写真が見られる。
●「オオタサイクル」の太田節子さん(左)と夫の正宏さん。
http://www.asahi.com/shopping/news/images/NGY200906140004.jpg ●幼児用自転車の出荷台数推移
http://www.asahi.com/shopping/news/images/NGY200906140004.jpg ◎ソース
http://www.asahi.com/shopping/news/NGY200906140002.html