三菱UFJフィナンシャル・グループのネット証券大手「カブドットコム証券」(東証1部上場、
東京都千代田区)の元男性社員らによるインサイダー取引疑惑で、元社員が同証券に
勤務していた時期に社内メールで自社の株式公開買い付け(TOB)に関する内部情報を知り、
株を購入していた疑いのあることが証券取引等監視委員会の調べでわかった。
メールは斎藤正勝社長名で、約80人の社員のほぼ全員に送信されていた。不正取引に
悪用される恐れのある内部情報を社内で共有していた形で、同証券の情報管理体制が
問われそうだ。
監視委は近く、このメールの情報などを使って自社株を買い付けたとして、元社員と
株の取引口座を提供した知人の2人に対し、金融商品取引法違反(インサイダー取引)の
疑いで、数十万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告する。
調査関係者などによると、元社員は、同証券に勤務していた2007年、3月と11月の
2回にわたり三菱東京UFJ銀行が同証券へのTOBを実施するとの内部情報を入手。
それぞれの公表前に知人の口座で知人とともに自社株を買った疑いが持たれている。
2人は公表で値上がりした株を売り、計数十万円の利益を得たという。
社内メールが送信されたのは、07年11月中旬。同月のTOBが公表される直前だった。
メールは業務連絡として斎藤社長名で送信されており、近くTOBが実施され、同証券と
同行との業務・資本提携が強化されるなどとした内容が記されていたという。
メールでは、TOB情報が株価に影響を与える可能性の高い重要事実に当たるため、
取り扱いに注意するよう促していたが、元社員はパソコンでメールを確認すると、
すぐに自社株を買い付けたという。
同証券の株価は、公表日の11月14日の終値は15万3000円だったが、翌15日には
17万1000円まで上昇。TOBで、同証券は同銀行の連結子会社となった。
証券各社によると、上場する証券会社では、自社や顧客企業に絡むTOBや決算の
情報など重要事実の取り扱いについて、情報を知り得る社員数を絞り込み、秘密保持に
関する誓約書を提出させるなど、ほかの業界の上場企業より厳格な情報管理体制を
取っている。大手証券会社の社員は「重要事実を社内メールで社員に周知することは
あり得ない」と話している。
カブドットコム証券は、報道で疑惑が明るみに出た今月13日付で元社員を懲戒解雇に
しているが、社内メールの件については「監視委が調査中で、今は説明できない」としている。
カブドットコム証券は1999年設立で、先月末現在の従業員数は98人。
▽News Source YOMIURI ONLINE(2009年5月29日03時05分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090529-OYT1T00030.htm ▽Press Release
弊社元社員への証券取引等監視委員会調査につきまして
http://www.kabu.com/info/2009/0515.asp ▽カブドットコム証券 株価 [適時開示速報]
http://www.kabu.com/ http://company.nikkei.co.jp/index.aspx?scode=8703 http://smartchart.nikkei.co.jp/smartchart.aspx?Scode=8703.1