クローン食品を安全と結論づけた内閣府の食品安全委員会に、1カ月で172件の
意見が一般から寄せられ、そのうち7割程度が「気持ち悪い」など批判的意見だった
ことが26日分かった。委員会ではこうした意見に配慮して、下部組織の専門調査会で、
安全性評価について再審議を行うことを検討している。
クローンをめぐっては、消費者の違和感や宗教・倫理面から反対論が根強く、委員会の
審議も影響を受けた形になった。
同委員会では今年3月12日、成長したクローン牛と豚、その子孫の食品について
「従来の牛や豚と同等の安全性を有する」と結論づけた評価書案をまとめ公表。
厚生労働省に答申する方針で、念のため30日間、インターネットなどで一般から
意見を募集した。
その結果、寄せられた172件の意見のうち、「気持ちが悪い」などクローン食品への
反対・消極論や、「検討不足の点がある」など評価書案への批判が7割程度を占めた。
評価書案に賛成する意見は2、3割だった。
この結果を受け、委員会では厚労省への答申を延期し、専門家で構成する「新開発
食品専門調査会」で評価書案の内容を再審議することを検討している。委員会では
年間平均100件以上の食品・薬品の安全性を審議・評価し、答申前に一般意見を
募集しているが、通常、意見は数件程度。専門調査会で再審議することもないため、
今回は異例の展開。
ただ、委員会関係者によると、評価書案の内容を根本的に覆すような科学的な指摘は
一般意見でもなかったため、再審議しても、クローン食品の安全性を認める結論は
変わらないとみられる。
クローン食品をめぐっては、委員会は推進でも反対でもなく、厚労省の諮問を受け、
安全性を科学的に検証・評価する立場。「気持ち悪い」などの感情論や宗教・倫理的な
意見は「排除する」としてきたが、実質的にはこうした意見に配慮する形で、慎重
審議を行うことになりそうだ。
委員会では「意見の中には、科学的に重要な指摘があったため」と説明しているが、
内閣府の関係者は「科学的な検証は終わっている。批判意見が多く、無視できない
ため、あえてもう一度調査会で審議するのだろう」と分析している。
◎ソース
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090527/biz0905270113001-n1.htm