パナソニック、シャープなど大阪湾岸に新工場の建設を計画している電機大手が
部品や素材調達での輸送効率化のため、「ミルクラン」と呼ばれる巡回物流システム
の導入を検討していることが8日分かった。陸運最大手の日本通運が基本構想を提案
しているもので、関西一円の部材供給工場を定期巡回することで輸送を一元化し、
物流コストの大幅削減を図る。薄型テレビ、太陽光発電向けのパネルの本格生産に
備え、早ければことし9月ごろにも運用を開始する見通しだ。
日通が三洋電機を含めた電機3社に提案したミルクラン構想は、牛乳集荷のための
牧場の定期巡回になぞらえた仕組みで、日通が大阪湾岸の3カ所に物流センターを
設け、部材メーカーから巡回して集めた各種部材を電機大手の生産拠点に届ける。
日通の提案に対し、一部の電機大手が部材メーカーとの取引を洗い直す作業に入る
など、構想の実現に向けた取り組みが動き始めている。
背景にあるのは大阪湾岸で進められている新工場の相次ぐ建設だ。シャープの液晶
テレビ工場(堺市)をはじめ、パナソニック、三洋電機が次々に一帯で薄型テレビ、
太陽光発電、さらにリチウムイオン電池の新たな生産拠点の開設に乗り出している。
一方、薄型テレビや太陽光発電用パネル生産に必要な部材メーカーは関西一円に
集積している。兵庫県下の旭硝子、ダイセル化学工業、大阪府下の日東電工、住友
化学、滋賀県下の東レ、日本電気硝子などで部材が生産され、電機大手の工場に
供給される予定だ。
具体的には、日通を中心とする物流会社がこれらの部材メーカーを定期巡回して
部材を集荷、3カ所のセンターに運ぶ。センターでは工場別に部材の仕分けをして
次々と発送する。
センターには日通が約3000平方メートルの中規模倉庫を設置。部材はいったん
センターに集まるが、滞留することなく届け先に流れるため、在庫用の大きな
スペースは必要ない。また個々の物流会社が委託したメーカーの都合にあわせて
輸送する従来の非効率性の改善も期待できる。
日通は効率性を高めるためシステム全体を管理。電機大手の生産計画に合わせて
車両を手配、運行時できるようGPS(衛星利用測位システム)で車両の位置を
把握するほか、さらに3つのセンターでの部材納入、在庫削減を統括する。
関西経済連合会によると、湾岸のパネル関連工場の投資額は全体で1兆1800億円
に達する見通しで、平成21年から22年にかけて工場が完成、生産が始まる。
ミルクランによる部材集荷方式は、二酸化炭素(CO2)削減にもつながる物流
システムとして物流業界で注目されていて、自動車業界ではすでに導入されている。
◎日本通運 [コード/9062]
http://www.nittsu.co.jp/ ◎ソース
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090408/biz0904081301003-n1.htm