世界的な金融危機の深刻化と国内保険市場の縮小というダブルパンチが国内保険会社に打撃を
与えている。13日出そろった主要生損保会社の2008年4〜12月期決算は、昨秋以降の株価急落で
保有株の評価損が大幅に膨らんだことから軒並み大幅減益となった。経営環境の悪化を見越して
三井住友海上グループホールディングス(HD)など3社が経営統合で基本合意したが、生き残りを
かけた再編が進むのは必至だ。
◆「戦国時代だ」
「環境が悪過ぎる。これではどうしようもない」
この日の決算発表直前、ある大手生保幹部は嘆息した。
生保では、運用環境の悪化から経営の健全性を示す保険金支払い余力(ソルベンシーマージン)比率が
08年3月末比で富国生命保険を除く8社が低下し、三井生命保険など3社が赤字に転落。損保でも、
深刻な自動車離れで主力の自動車保険販売が低迷、一般企業の売上高に当たる正味収入保険料は
前年同期比で6社が減収となった。
「構造問題である少子高齢化による市場縮小に加え、金融危機が直撃。環境が改善されない限り業績の
向上は難しい」(大手損保幹部)という状況だが、今回の苦境が「メーカーなどと比べて10年以上遅れて
いる」と言われる保険業界の再編を促している。
「事業収支の改善が難しい中、思い切った業務の見直しが必要との認識で一致した」(ニッセイ同和
損害保険の立山一郎社長)
1月23日、三井住友海上HD、あいおい損害保険、ニッセイ同和の3社が来年4月の経営統合に向け
正式協議に入ると発表。事業規模拡大と効率化を進め、将来の成長戦略を描くことを狙った。
先手を取られた東京海上HDや損害保険ジャパンも逆襲の機会を虎視眈々とうかがう。ある大手損保
幹部は「戦国時代に入った」と指摘する。
◆三井・住友生命は…
一方の生保業界。「市場の縮小速度が損保よりは緩やかで、あと10年は持つ」(大手生保幹部)という
安心感から再編の動きは鈍い。その“余裕”を世界的な金融危機が吹き飛ばそうとしている。
「残念な結果だが、住友生命保険の力を借りてよい会社にするだけだ」。業績の大幅悪化から、住友生命
などから常勤取締役を受け入れることを決めた三井生命保険幹部が話す。
三井生命は、グループ会社との連携を強めて経営再建を図る考え。しかし、ライバルの住友生命から
役員を迎えることで「懸案事項だった“三井住友生命”の実現に向けてアクセルが踏まれるのか」(中堅
生保幹部)と両社の動向に注目が集まる。
ただ、生保の再編は相互会社形態が多く、合併へのハードルは高い。大手生保は海外市場への進出に
活路を見いだしているが、ここ数年、保険金不払い問題に経営資源を裂くことを余儀なくされ、世界市場
での事業展開は欧米の大手保険会社に大きく水をあけられている。あと10年は持つとみていた国内市場も
「手を入れることが必要」(大手生保幹部)な状態に追い込まれている。生損保とも再編は避けられない。
▽ソース:FujiSankei Business i (2009/02/14)
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200902140033a.nwc