ソニーが大規模な人員削減を発表し、韓国のサムスン電子がさえない見通しを示すなど、
アジアの主要セクターであるハイテク産業に長い冬が訪れたことを示唆する話題が続いている。
ソニーは9日、中核であるエレクトロニクス事業で約8000人の人員削減を行うなど、収益改善策を通じて
年間で1000億円以上の費用削減の実現を目指す方針を発表した。
この数時間前、競合のサムスン電子は、世界的な景気後退の影響を理由に、売上高や利益、
設備投資額を引き下げることを明らかにしていた。
悪いニュースは、向こう数週間でさらに増えることも予想される。
世界経済が今後も低迷を続け、テレビやコンピューターなど電化製品の需要減退に歯止めがかからない場合、
今回のソニーの人員削減が、アジアのハイテク産業での雇用削減の呼び水になる可能性がある。
クレディ・スイスのエコノミスト、ジョセフ・ラウ氏は「まだ始まったばかり。向こう2─3四半期以内に底を打つ
可能性は低い」と指摘。さらなる企業が雇用削減や経営状態の立て直しを終えるには時間がかかるとの見方を示した。
このところハイテク企業では、半導体のインテルやインフィニオン、STマイクロエレクトロニクス、
テキサス・インスツルメンツ(TI)(TXN.N: 株価, 企業情報, レポート)などから業績予想の下方修正やコスト削減計画が
発表されていたが、ソニーとサムスンが関係者に与えた衝撃は最も大きな波紋の1つとなった。
多くの企業はこれまで、人員削減以外のコスト削減などを実施することで、大規模な解雇は避けてきた。
しかし、米国や欧州市場での深刻な需要減退を受け、雇用削減以外の選択肢はじきに限られてくるとみられる。
台湾のパラダイム・アセット・マネジメントのファンド・マネジャー、カレン・リン氏は「クリスマスや中国の
旧正月の期間に需要が回復しなければ、ハイテク企業は生き残りを真剣に考えなければならなくなる」と指摘。
「企業が一段のコスト削減のために人員削減を始める可能性は高い。半導体企業、なかでも生産ラインを
持つ会社は、設備稼働率が低下を続ける限り労働力を減らすのは理にかなっている」と述べた。
これまでのところ、日本や韓国、台湾の主要企業では、大規模な人員削減は見送られている。
しかし、過去最悪の業況悪化に見舞われている台湾のDRAMメーカーの間では、最近になって従業員に
無給休暇取得を求める動きも出ており、受託生産で世界的大手の台湾積体電路製造(TSMC)や
聯華電子(UMC)もその例外ではない。
韓国ではハイニックス半導体が人件費削減に向けて動いているほか、
サムスン電子やLG電子は例年より長い設備休止期間を設けている。
日本でも一部の企業が契約・派遣社員の削減を行っているが、その動きはやがて正社員にも及んでくるとみられる。
ロイター
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-35351320081210