金沢港にほど近い、金沢市大野町のしょうゆが、海を越えて広まっている。フランス・パリの
三つ星レストランで隠し味として珍重され、高級百貨店の店頭にも並ぶ。同町内の老舗(しにせ)
「ヤマト醤油味噌(しょうゆみそ)」が海外進出を始めて11年、「金沢の食文化の豊かさを
知ってほしい」との思いで始めた挑戦が実を結びつつある。
◇大豆本来のうまみ 三つ星店で隠し味◇
1911年創業の同社は、全国有数のしょうゆ産地の大野でも、屈指の歴史と規模を誇る。
1997年にドイツの食品展示会に参加したのを皮切りに、海外進出に力を入れ始めた。
当時、輸出市場は大手メーカーの独壇場だったが、「商品だけでなく、背景の食文化まで
紹介すればチャンスはある」と山本晴一社長(51)が決断した。主力になったのが、大豆本来の
味わいを生かすために加熱殺菌せず、長期熟成させる製法で開発した生しょうゆ「ひしほ」
だった。
99、00年に参加したアメリカの展示会で商談が進み、高級ホテルのレストランに食材を卸す
業者への輸出が実現。その後も欧米の展示会へ参加を重ね、03年には「世界初の百貨店」と
言われるフランス・パリの「ボン・マルシェ」でも取り扱いが始まった。
「近年フランス料理に素材重視の味の流れが生まれて、隠し味にしょうゆを使うシェフが増えた」
と山本社長。パリの料理界に評判が広まり、200年以上の歴史を誇る最高級レストラン
「ルドワイヤン」や、パリで最も予約が取りにくいとされる「アストランス」など、三つ星の
名店9店が採用した。
現在では、同社の売り上げの1割を海外向けが占めるまでに成長した。最近の急激な円高は
輸出には痛手だが、山本社長は「海外はこれからも伸びるマーケット」と積極姿勢を崩さない。
むしろ心配の種は、国内市場の低迷。若い世代の和食離れ、上質なしょうゆやみそへのこだわりの
低下は、「金沢の食文化のレベルが高いから海外でも通用した」と考える山本社長には、足元を
揺るがしかねない危機と映る。
対策として、伝統食の良さを体感してもらおうと、古い蔵を改装したホールとキッチンで実際に
みそ汁を作って食べてもらう「食育」を続けている。今年は、アイスクリームにかける専用の
しょうゆも発売、消費のすそ野の拡大を図る。
「海外でも日本でも、良いものを提供するというスタンスは同じ。あまりに急激に変わって
しまった日本の食文化を守り、伝えたい」。老舗の情熱が、新たな時代を開く。
ソースは
http://mytown.asahi.com/ishikawa/news.php?k_id=18000000812070005 「三つ星店御用達」の印が入った、ヤマト醤油味噌のしょうゆ「ひしほ」
http://mytown.asahi.com/ishikawa/k_img_render.php?k_id=18000000812070005&o_id=7347&type=kiji.jpg 依頼を受けてたてました。