成田空港周辺9市町でつくる「成田国際空港都市づくり推進会議」の視察団が11月、
独ミュンヘン空港と近隣自治体を訪ねた。いずれも「2本の滑走路を持つ内陸空港」で
ありながら、年間発着回数は、開港30年の成田が20万回に対し、16年のミュンヘンは
43万回に達する。反対運動で建設が難航した成田空港を教訓に、地域住民と共生し、発展する
ミュンヘン空港で、年間発着30万回の可能性を探る視察団は将来の姿を重ね合わせた。
石造りの建物が続く街並み。ミュンヘン空港から約5キロ離れたフライジング市中心部の
市役所庁舎で、小泉一成・成田市長を団長とする視察団17人は、ディーター・タールハマー
市長の説明に耳を傾けた。
「こっちは他の自治体より騒音がひどいのに、税収は少ない。
地域全体の税収を一つの鍋に入れて人口で分けられればいいのだが……」
タールハマー市長が漏らした本音に、視察団の首長らはうなずき、拍手を送った。経済効果と
騒音を受ける空港周辺自治体にとって、双方のバランスをとることの難しさを指摘した言葉
だったからだ。
空港北側の人口約4万6000人のフライジング市の法人税収入は年間2100万ユーロ
(約24億7000万円)。一方、空港南側のハルベルグモース町は人口約8800人だが、
税収は2500万ユーロ(約29億4000万円)に上る。
ハルベルグモース町は空港とともに発展。開港後の誘致活動が奏功し、IT(情報技術)関連を
中心とした企業が進出した。開港前は数社しかなかったが、現在は約1400の企業が事務所を
置く。人口も開港後、約8割増となった。「今後も企業進出と人口増加が見込まれる。幼稚園や
学校、老人ホームを充実させる必要がある」と、同町のクラウス・ストルマイスター町長は
強調する。
ただ、「周りの自治体が結束しなければ、空港問題に対する発言力が弱まってしまう」とも話す。
この言葉の通り、ミュンヘンには、空港周辺8市町村でつくる「ノース・アライアンス」という
組織がある。各自治体のトップが2か月に1度集まり、空港がもたらす利益と不利益について
話し合う。住民の抵抗が大きい騒音についても、飛行コースを分散して広く薄くするなど、
負担を分担し合う考え方が浸透していた。
成田空港問題を研究し、ミュンヘン空港開港時にミュンヘン市計画局長だったワルター・
ブーサー氏は、「日本人は調和を求めすぎる。不協和音を乗り越えるためには、妥協する姿勢も
必要だ」と助言した。
視察団は今年1月、成田国際空港都市づくり推進会議を発足して連携を強めている。もちろん
地域間に差はある。空港の敷地を持つ成田市と芝山町にホテルや物流倉庫が密集する一方、
空港から遠い地域では雇用の恩恵は少ない。騒音を拡散させないため飛行コースは限られ、
特定の地域に騒音が集中する問題も抱える。
30万回の実現に向け、どこまで格差を解消できるのか。9市町はミュンヘンから宿題を
持ち帰った。
ソースは
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news/20081206-OYT8T00079.htm “ミュンヘン空港と周辺自治体”という地図は
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20081206-156500-1-L.jpg 衣良を受けてたてました。