女性下着販売のシャルレの経営が迷走している。低迷する業績を立て直そうと創業家が中心となって
MBO(経営陣による自社買収)を進めているが、内容の不公正さを訴える内部告発が相次ぎ、MBOの
ためのTOB(株式公開買い付け)の期限は3度も延長された。混乱を嫌気して銀行も買収資金の融資を
中止、MBO成立に暗雲が漂う。昨年6月、女子バレーボール五輪銅メダリストの三屋裕子社長を事実上
解任し、経営権を握った創業家一族。社内には不協和音も渦巻いているとみられ、再建の前途は多難だ。
■相次ぐ内部告発
TOB価格の決定の過程で、買い付け者の創業家側から圧力があった―。9月19日にシャルレ経営陣が
MBOを発表した翌月、産経新聞にこうした内容の告発文が寄せられた。
MBOは創業者の長男である林勝哉社長ら経営陣が、米証券大手モルガン・スタンレーグループの投資
ファンドの支援を得て進めているものだ。創業家の資産管理会社2社がTOBで株式を取得、その後、創業家
とファンドがシャルレに間接出資する。買い付け価格は1株800円で発表日前日の終値(509円)よりも57%
高い水準だ。ただ告発文は、シャルレが将来の利益計画を不当に低く見積もり、価格が安くなるよう創業家
側に協力したと指摘。「一般株主などにとって不利な内容」としている。
同様の告発はシャルレ社内でも行われ、同社は事実関係を確認するため第三者委員会を設置。同委員会
は10月末、TOB価格決定の過程で、「創業家側が合理的範囲を超えて介入した」と結論付けた。
また、MBOの手続きの問題点を指摘した顧問弁護士の意見書を受け取らなかったことも判明。今月18日
には大阪証券取引所が、情報開示が不適正として改善報告書の提出を求めた。
こうした混乱の結果、当初11月5日としていたTOB期限は12月8日まで1カ月以上延長。しかも三菱東京
UFJ銀行が最大116億円の買収資金の融資を取りやめ、関係者は新たな資金調達に走り回っている。
■尾を引く前社長解任劇
「社長交代時の混乱が尾を引いているのではないか」。シャルレの現状について、業界関係者はこう解説する。
昨年6月、大株主の創業家が3年間社長の座にあった三屋氏を「資本の論理」で解任、林氏が社長に就任
した。解任劇を「三屋氏がMBO実施の障害だったため」と指摘する関係者もおり、社内には経営陣や創業家
に対する不信感が根強く残っているもようだ。
MBOをめぐる混乱は企業のブランドイメージ低下にもつながりかねず、消費不況の中、さらに厳しい経営を
強いられるのは必至だ。
岩井証券の有沢正一イワイ・リサーチセンター長は、「会社は創業家のものではなく株主のもの。価格決定
について投資家への説明責任を果たし、理解を得た上でMBOを進めるべきだ」と話している。
▽産経新聞 (2008/11/30 08:18)
http://www.sankei-kansai.com/2008/11/30/20081130-004087.html