ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)クレジットカード大手の米ビザ(NYSE:V)が29日
発表した7-9月期(2008年9月期の第4 四半期)決算は、カード決済処理件数の増加を背景に
赤字が縮小した。だが向こう3年にわたり通期の増収率は、世界の経済環境の厳しさを背景に、
従来予想レンジの下限になるとの見方を示した。
同四半期の最終赤字は、前年同期の16億6000万ドルから3億5600万ドル(1株当たり45セント)
に縮小した。
訴訟関連費用、リストラ費用、取得資産の償却費用などの特別項目を除くと、1株利益(EPS)は
58セントとなる。
収入は前年同期比17%増の17億1000万ドル。トムソン・ロイターがまとめたアナリスト平均予想
(特別項目を除く)は、EPSが55セント、収入が16億8000万ドルだった。
ビザカードの利用額は15%増の6990億ドル。決済処理件数は19%増加した。また、ビザブランドの
カード枚数は世界全体で16億枚と、12%増加した。
同社は向こう3年間の通期の増収率予想について、今年4月に示した11-15%の下限になるとの
見通しを発表。また同期間の通期EPSの伸び率を20%以上とする予想を据え置いた。
1年目の09年については、アナリスト予想では、EPSは22%増の2.71ドル、収入は13%増の70億
2000万ドルとなっている。
ビザの株価は、今年3月に米国で過去最大となる196億5000万ドル規模の新規株式公開(IPO)を
実施した後、IPO価格(44ドル)の2倍以上に上昇。しかしその後、金融危機の深刻化に伴い下落して
おり、先週は初めて、一時IPO価格を下回る水準まで下げた。
さらに、同社は訴訟を抱えている。同社と米マスターカード(NYSE:MA)は今週、ディスカバー・
ファイナンシャル・サービシズ(NYSE:DFS)が両社を提訴していた件で、計27億5000万ドルを支払う
ことで合意した和解内容の詳細を明らかにした。ディスカバーは04年に提訴した際、「両社が競争を
阻害する規定を強要したため、両社の加盟銀行がディスカバーのネットワークでクレジットカードと
デビットカードを発行することができず、ディスカバーの成長を制限した」として、60億ドルの損害
賠償を請求していた。
こうした困難はあるものの、同社はマスターカードと同様に、ほかのカード会社よりも良いポジション
に位置しているとみられている。というのも、同社は決済処理代行やクレジットサービスの手数料徴収、
銀行への信用リスクの移転などを手がけており、カード発行業務は行っていないからで、世界中で
電子決済処理が増えるにつれて、両社の事業は大きく成長することになる。ビザはまた、信用危機が
広がる中で利用が増えているデビットカード市場で、確固たる地位を築いているという強みもある。
決算と業績見通しは米株式市場の取引終了後に発表された。同社株の通常取引終値は、前日比
0.72ドル(1.44%)高の50.69ドルだった。その後の時間外取引では下げに転じ、終値比0.37%安の
50.50ドルで取引された。
▽ソース:NIKKEI NET (2008/10/30)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCLT2405.html