【コラム】「新興国救済のための新融資制度」提案でヒットを飛ばした日本の財務省の真意 (DIAMONDonline “プリズム+one”)[08/10/22]

このエントリーをはてなブックマークに追加
2やるっきゃ騎士φ ★
-続きです-
[2/3]
実は、IMFには中小国、新興国へ融資する仕組みがすでにある。その融資枠も2100億ドルの
余裕がある。ところが、IMFの動きが鈍い。何より、当の新興諸国がIMFからの借り入れを
逡巡する。嫌悪している、とすら言っていいかもしれない。
10年前、タイから周辺国に波及した東アジア通貨危機において、IMFの対処はあまりに
厳しく、また、見通しを誤った。例えば、インドネシアでは、IMFの融資条件にあった
16銀行の閉鎖と預金カットが金融危機を悪化させてしまった。韓国は、いまだにIFMへの
恨みを消せない。金融機関の整理淘汰に止まらず、財閥を解体までし、その一方で、財政状態が
良好だったにも関わらず、金利を引き上げ、厳しい緊縮政策を強いたからである。
この画一的で強圧的なIMFの手法を知る新興諸国は、IMFへの支援要請に二の足を踏んで
いるのである。そうして、融資枠の2100億ドルが宝の持ち腐れになりかけていた。

こうした事情を知る日本政府、財務省は、緊急提言を行うことで、IMFへ積極姿勢への転換を
図ることを迫ると同時に、融資条件を緩和するように促したのだった。IMFがあくまで金融システム危機に焦点を当てた対応を行い、経済・産業政策まで深く踏み込まないことで、
新興諸国が受け入れやすくすることに力点が置かれた提案だった。G7とIMFは、日本提案を
反映した行動計画とコミュニケを発表した。

さて、この時宜を得た、狙いも的確な政府提案を、視点を変えて考えると、通貨当局としての
財務省の別の意図が見えてくる。
IMFへの融資原資は、外国為替資金特別会計である。外為特会の外貨準備高1兆ドル弱
(約100兆円)とその金利収入は、昨今、“日本版政府系ファンド”の原資や、さまざまな
政策財源に振替可能な”埋蔵金”として、政治的な注目を浴びてきた。
だが、そのいずれもが、損失発生の危険性をはらんでいたり、会計上の整合性が危ういもの
だったりで、筋が良いとはいえない。こうした政治的思惑に左右されない、国内外の支持を
得ることのできる使途はないか、と財務省は考えていたのだろう。IMFを通じた
新興国支援は、格好のアイデアである。

一方で、複数の関係者によれば、現在の財務省は、1兆ドルまで膨れ上がった外為特会を、
巨額すぎると考えている。減らしていく方法はないかと密かに模索している、という。
理由は二つある。

-続きます-