世界大恐慌以来で最悪の金融危機に対して、英国のブラウン首相と米国のポールソン財
務長官は異なる対処方法を示した。
ブラウン首相は8日、500億ポンド(約8兆6600億円)を投じて、少なくとも英国の8銀行を
一部国有化する方針を表明し、金融システムの安定化策としては最も直接的な手法を選択
した。これは、金融機関からの不良資産買い取りを主眼とした米国の金融安定化策とは対
照的だ。
ルイジアナ州立大学のジョゼフ・メーソン教授は「米国は欧州のどの国に比べても国有化
には難色を示す傾向にある」とした上で、英国の政策について、より直接的だと評価した。
また、CASSビジネス・スクールのアンドルー・クレア教授も「英国の政策の方が好ましい」
とし、米国の政策は「どっちつかずの内容で、何に使うのか詳しく説明しないまま7000億ドル
の資金を求めている。やろうとしているのは、不良資産を買い上げるということだけだ」と批
判的だ。
ブラウン首相の金融安定化策は、第2次大戦後に航空から鉱業まで産業を国有化したか
つての労働党の路線に戻ったといえる。サッチャー元首相が率いた保守党政権は1980年代
に国有化を破棄し、労働党のブレア政権も民営化路線を継承していた。
ブラウン首相は国民の支持率や党内での求心力の低下に見舞われていたが、経済が国
政の重要課題になるにつれ、前財務相だった手腕を発揮して、金融救済策で支持を得ている。
■英国に適した手法
英国の金融危機は米国のサブプライム(信用力が低い個人向け)住宅ローン市場の崩壊
に端を発しているが、英国の銀行は米銀ほどにはローン関連の証券化商品の組成や販売
を手掛けておらず、ブラウン首相は米国ほど多くの不良債権に対処する必要はない。
7月に公表された英財務省の報告書によると、3月末の英銀の住宅ローン担保証券保有
残高は約2800億ユーロで欧州市場の半分を占めているが、米国(4兆6800億ユーロ)の5%
にすぎない。イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)元メンバー、ディアンヌ・ジュリアス
氏は「米国ではサブプライム問題が巨大だが、英国はサブプライムへの投資は多くなかった。
英国が金融問題に対処するには、資本増強という方法が適している」と指摘している。
ブラウン首相は、資本注入策について「世界をリードした」と自賛。ポールソン米財務長官
は同日、「あらゆる規模の金融機関の資本増強を含め、最大限の効果を発揮するために
与えられたすべての手段を活用する」と呼応した。
(2008/10/09 13:27 JST)
ソース:ブルームバーグ
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003015&sid=abcC2PpzqUeA&refer=jp_europe ・関連スレ
【金融政策/米国】財務省:金融機関に対する資本注入を示唆―「日本の教訓学びたい」財務次官[08/10/09]
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1223521767/ 【金融】G7:為替で懸念表明へ 過度の変動をけん制…米欧の金融機関は資本増強が重要 [08/10/09]
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1223505956/ 【経済政策/英国】大手金融グループに9兆円の公的資金投入へ[08/10/08]
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1223432727/ ・関連記事
英国の銀行救済策:独仏の業界も自国政府に採用迫る−米紙WSJ
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、オンライン版)は9日、独仏の銀行業界が自国
政府に対し、英政府が8日公表した公的資金注入を柱とする4000億ポンド(約69兆円)規模
の銀行救済策を、金融安定化措置のモデルとして採用するよう強く求めていると報じた。情報
源を明らかにせずに伝えた。
英政府は株式購入を通じて500億ポンドを国内銀行に注入するとともに、銀行の債務保証
に最大2500億ポンドを投じることなどを計画している。同紙によれば、独仏の銀行業界関係
者は、英政府の救済策は同国の銀行を不当に利することになるとみているという。
(2008/10/09 15:54 JST)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003015&sid=aoH1Md.GlF9Q&refer=jp_europe
http://ukmedia.exblog.jp/9830242/ >先のことは、現状ではまだまだ分らない感じがするが、FTのジョン・プレンダー氏が(シティーに関する著作多数)、
>大手金融機関は今後、一種のユーティリティーになるのではないか、
>という仮説を立てている(リーマン危機勃発直後のビデオ映像の中で)。
>つまりは、電気会社やガス会社の様に(こうした企業も民間企業となってはいるが)、
>公的サービスとして機能するようになるのでは、と。民間企業が利益至上主義でお金の貸し借りあるいは調達をする、
>というのではなく。あくまでも「仮説」であろうが、「市場に任せる・任せきる」のが
>果たしてベストかに関して大きな疑問符がついたわけだから、面白い仮説でもある。