【コラム】「狩猟型」経済のもろさ露呈−産経ニュース[08/10/08]

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1依頼@台風0号φ ★
 ある有力外資系銀行の米国人頭取はかつて、部内会議で「ファーミング(農業経営)などに関心はない」と
居並ぶ日本人行員に言い放ったという。短期的なハイリスク・ハイリターンではなく、古くからのお得意様を
重視すべしとの提案に対する答えだった。破綻(はたん)した日本の銀行を外資系ファンドが買収して誕生
した銀行であり、トップ以下経営の実権はほとんど外国人が握っていた。

 この話を聞いて、銀行経営にも農耕型と狩猟型があることを初めて知った。

 2003年暮れ、イラク戦争直後のバグダッドには戦後復興を目当てに世界中の貿易ハンターが集まって
いた。治安状況は急速に悪化していたが、旧イラク諜報(ちょうほう)機関に通信機器を売り込もうとする
ポーランド人、クルド地域に乗用車を売ろうとする韓国人、原油利権を求める中国人などが文字通り危険を
顧みず、日夜暗躍していたことを思い出す。

 狩猟型経営は製造業にもある。昨年北欧系自動車メーカーの完全子会社となった日本の老舗メーカーは
外国人経営陣の下、利益をある程度犠牲にしても長期的に市場シェアを確保する従来の手法から、非効率
な分野を切り捨ててでも短期的利潤を最大化する戦略に転換し始めたと聞く。

 共通するのは、地道に田畑を耕して得る中長期的利益よりも、手っ取り早く一か八かで獲物を狙う経営手法
である。思えば最近の米国発金融危機も、こうした「狩猟型」経営がもたらしたものかもしれない。

▽著者
元外務省中東アフリカ局参事官。現在立命館大客員教授、AOI外交政策研究所代表
宮家邦彦
▽ソース:産経ニュース (2008/10/08 09:27)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081008/biz0810081540003-n1.htm (1/2)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081008/biz0810081540003-n2.htm (2/2)
記事は>>2以降に続きます。