クレハは12月初旬をめどに、家庭用食品包装ラップフィルム「クレラップ」の主力6製品すべてについて、
フィルムを切るための刃を、金属から、安全で環境に優しい植物由来のプラスチックに切り替えて販売する。
市場トップの旭化成も北海道の一部店舗で同様の商品を試験的に販売しており、早期の全国展開も検討
している。現在、国内の同フィルム市場は約500億円。単身世帯の増加で年2%程度成長している。しかし、
ピークを過ぎる2010年以降は、市場の落ち込みで開発競争が一段と激化。体力勝負の様相を呈すると
みられる。このため両社ともいち早く安全と環境に配慮した商品を展開することで、勝ち残りを目指す。
クレハが、植物由来のプラスチック刃に切り替える背景には、消費者の環境意識の高まりが大きい。刃の
素材には、水と二酸化炭素(CO2)に分解される性質を持つ環境に優しい植物由来のプラスチック素材、ポリ
乳酸を使用した。また、一部の消費者から「分別回収の際に手を切った」との声も寄せられており、開発に
5年の歳月をかけて安全・環境面への先手を打った格好だ。主力製品以外の商品についても来年3月を
めどにすべて切り替える。
一方の「サランラップ」を販売する旭化成ホームプロダクツ(東京都千代田区)も、今年4月から北海道の
「コープさっぽろ」の約80店舗でバイオプラスチック刃のサランラップを試験的に販売している。同社は今年
3月にパッケージを改良。指でフィルムをつまみやすい設計としたばかりで顧客の反応も良好だが、バイオ
プラスチック刃についても「消費者の意見を検討し、今後全面的に切り替えることもありうる」という。
クレラップとサランラップの素材は、酸素を通しにくい点が売り物のポリ塩化ビニリデン。両製品で家庭向け
国内市場の8割強を占める。
ただ、課題もある。同フィルムは長い間、物価の優等生だったがクレハは今年3月、原材料の紙や原油高騰
を踏まえクレラップの価格を19年ぶりに20〜50円値上げしたばかり。旭化成のサランラップも、28年ぶりに
出荷価格を2月出荷分から平均で10〜50円値上げした。両社は今のところ、「値上げによる買い控えはない」
としているが、今回のプラスチック刃の採用は、クレハの場合だと従来の刃に比べコストはさらに約8%上乗せ
されるため、場合によっては再値上げの要因になりかねない。
同フィルムの最大の役割は、包んだ食品の鮮度を保持すること。技術の改良も積み重ね、今やなくてはなら
ない生活必需品だ。今後は「環境」「安全」というキーワードをいかに盛り込み、高付加価値化に取り組んで
いけるか−。それが、収益性強化のためのカギとなりそうだ。
▽参考
「サランラップ」プラスチック刃採用商品の限定発売について (旭化成 プレスリリース 2008/04/22)
http://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2008/li080422.html ▽ソース:FujiSankei Business i (2008/10/07)
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200810070050a.nwc