■通報場所割り出し素早く到着
携帯電話で119番した人の位置を自動的に割り出し、救急車や消防車の現場到着までの
時間を短くする総務省消防庁の「位置情報通知システム」は今年8月1日現在、消防本部の
17%で導入されている。昨年4月の運用開始から順調に増えているが、消防庁は市町村の
消防本部の統合などに合わせた一層の導入を呼び掛けている。
▽増加する携帯通報
2006年に受理した119番のうち、携帯電話からの通報は18%を占め今後も増加する見
通しだ。通報者は、事故などが起きた場所と救急隊などが来る際の目標となる建物などを伝
える必要がある。固定電話では番号から自動的に通報者の場所が分かるのに対し、携帯電
話は自分で説明する必要があり、消防本部の指令員が位置を確認するのに時間がかかる
課題があった。
このため開発されたのが、119番を中継した携帯電話会社の複数の基地局から通報者の
位置を割り出し、消防本部の通信指令台モニターの地図に示すシステム。衛星利用測位シ
ステム(GPS)機能付き電話では、通報場所を半径数メートルまで絞り込むことが可能だ。
▽高い救命効果
運用開始時には24道府県の41消防本部がシステムを使っていたが、8月現在では42都
道府県の137本部に増加。消防庁によると、本年度中にさらに50本部が導入の見通しだ。
効果も出ている。北海道小樽市の山中で6月、60代の男性が30メートルのがけから転落
した事故では、一緒にいた男性の携帯電話からの通報を受け大まかな場所を特定、救急隊
は9分後に到着した。市消防本部は「現場到着が早くなり、救命効果が高い」と話す。
難しい町名が多い京都市の消防局は「地理に不案内な観光客が多く、住所が読めずに通
報場所の確認に時間がかかることも。画面上で場所が分かるようになり、通報内容の把握が
スムーズになった」としている。
一方、10年度の導入を予定している松山市消防局は「GPS機能のない場合、場所特定の
精度が低い」と指摘した。基地局の少ない地域では、通報位置を半径数百メートルから10
キロの範囲にしか絞り込めないからだ。
▽広域化で不可欠に
消防本部のうち管轄範囲の人口が10万人未満は、全体の約60%を占める。このため消防庁
は市町村消防本部の統合、広域化によって管轄人口を12年度末に、最低30万人以上にまで
引き上げることを目指している。
この流れを受け現在、群馬や奈良など11県が、県内の消防本部を一つに統合する計画だ。
指令員が県内の住所をすべて覚えるのは難しく、システム導入は急務となる。
導入に必要なコストは、指令台にシステムを組み込む方式で約1000万円、ノートパソコン型
の簡易端末を取り付ける方式で約300万円。
消防庁は「本部統合に備えた導入には、財政支援を手厚くしている。広域化の際には、シス
テムの導入を検討してほしい」と話している。
画像:位置情報通知システムの仕組み
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200809080028a1.jpg ソース:FujiSankei Business i
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200809080028a.nwc