燃料価格の高騰を受け、自動車メーカー系の海運会社が、系列を超えて完成車を
消費地に輸送する動きが広がっている。輸送船の積載率を上げ、輸送コストの圧縮
を図るためだ。自動車メーカーも、効率的な輸送を実現するために積極的で、自動車
業界の“呉越同舟”はさらに加速しそうだ。
トヨタ自動車系のトヨフジ海運(愛知県東海市)は、三重県の鈴鹿工場(鈴鹿市)で
生産しているホンダ車の輸送についてホンダグループと交渉している。また、2004年
から豊橋港で積み込んでいるスズキ車の輸送台数は年々増加し、現在は月約6000
台と、トヨフジ海運の国内輸送台数の3%程度を占めている。
ホンダ系の海運会社も、ホンダ車だけでは荷室が埋まらないため、三重から広島経由
で福岡に向かう便では、広島でホンダ車を下ろして空いたスペースにマツダ車を積み込
んでいる。逆に福岡発三重行きの便では、ホンダの生産拠点が九州にないため、福岡
県のトヨタ自動車九州や日産九州工場で生産した完成車を積んで、無駄な空きスペース
を減らす努力を続けている。
海運各社が系列を超えた自動車の輸送に積極的なのは、船の燃料であるC重油の
価格が、昨年よりも約8割も上昇しているからだ。さらに、欧米自動車市場の減速で
日本車の輸出に陰りが見えている。トヨフジ海運の駒田邦男社長は、海運業界を
取り巻く環境について、「今後半年ぐらいは、厳しくなることを覚悟しなければならない」
との認識だ。
トヨフジ海運は、運航コスト削減の一環で、名古屋―横浜の「関東航路」と、名古屋―
広島―福岡などを結ぶ「中国・四国、九州航路」を統合した。これにより、例えば、トヨタ
九州で生産した完成車を関東に運ぶ場合に欠かせなかった名古屋港での積み替えの
手間を省くことができる体制に改めた。
自動車輸送船は、自動車の定期的な納入のため、「定期運航が原則」(駒田社長)
なので、積載台数が少なくても出港しなければならない事情を抱えている。海運各社の
「融通策」は、こうした収益構造に対する自衛手段の側面もある。一方、自動車メーカー
にとっては、例えば、新車の発売直後など、一時的に船で運ぶ完成車が増え、系列の
海運会社だけでは対応しきれない場合に、他社系列の船を使うことも容易になる。
原油高と自動車市場の減速によって、メーカーだけでなく自動車業界全体での効率化が
避けて通れない状況になっている。
(2008年9月6日 読売新聞)
ソースは
http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/ckei080906_1.htm ※依頼ありました
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1220448487/172