【コラム】改革の手綱を緩めるな―配慮や優しさだけで強い日本はつくれない…竹中平蔵[08/02]

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1依頼@サルモφ ★
二%程度の潜在成長率に甘んじていいのか

 安倍総理辞任と福田内閣の発足を経て、小泉内閣以降論じられてきた構造改革路線の
是非がふたたび議論されている。二〇〇七年(平成一九年)七月の参院選、九月の
自民党総裁選などを通して「改革の陰の部分」という表現が頻繁に登場し、また疲弊する
地方経済を念頭に、地方への「配慮」や「優しさ・思いやり」という表現が用いられるようになった。
【中略】
 〇二年三月、主要行の全貸し出しに占める不良債権比率は八・四パーセントに達し、
貸し渋り・貸しはがしによって、経済全体が疲弊していた。しかしいまでは、同比率も
一・五パーセントまで低下し、経済は正常化された。〇三年から〇六年までの過去四年間、
日本の成長率は本来の成長力(潜在成長率)である二パーセント程度を維持している。

 現状の日本経済の最大の課題は、さらに構造改革を進め、潜在成長率そのものを高めることである。
規制緩和や民営化、効率化を進めることで、現状では二パーセント程度と見られる成長力を、
二・五パーセント、さらには三パーセントへと高めることが期待される。
【中略】

第一の改革は終わった。第二、第三を急げ
【中略】
 すでに明らかなように、第一の不良債権問題はおおむね解決し、日本経済は「失われた一〇年」から
脱却した。しかし第二の強い経済の建設は、その第一歩としての郵政民営化がはじまったばかり
であり、今後の課題はきわめて多い。抜本的な教育改革(東大民営化などを含む)、徹底した
オープンスカイ政策、外貨準備の運用改革(日本版GIC設立)など、検討すべき大きなスケールの
制度改革は後を絶たない。また第三の財政については、二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支回復に
向けた改革の途上にある。これを実現させることは言うに及ばず、その後の財政健全化目標を
どうするかという根本問題を議論する必要がある。

格差拡大も地方の疲弊も「改革の陰」ではない
【中略】
 改革批判として唯一考えられる理屈があるとすれば、それは、財政改革で公共事業が減ったから
地方の経済が疲弊した、という点だろう。地方への「配慮」「優しさ」という表現は、たぶんに
地方向け公共事業を意識したものと思われる。しかしここ数年、公共事業を減らしたといっても、
これまで他の先進工業国に比べて飛びぬけて高かったものが、ようやく平均並に近づいた、
という程度である。そもそも公共投資拡大は、あくまで一時しのぎであり、これで地方の産業・企業が
世界と競争できる「強さ」を持つことにはならないのである。
【中略】
 地方の疲弊は、改革の陰ではなくグローバル化の陰の部分である。これに対する最大の対策は、
改革の強化なのである。

ポピュリズムは「国土の均衡ある衰退」を招く
【中略】
 構造改革をめぐる昨今の論議を見ていると、単に経済政策の次元を超えて、この国の
根本的なあり方が問われているようにすら感じられる。自分たちの不都合を何でも国のせい、
改革のせいにして多くを国に頼ろうとする一部の人たちと、これに安易に迎合する政治の姿は
非常に危ういものがある。
 安易なポピュリズム的政策は、日本を「国土の均衡ある衰退」に導くだけである。

引用元【全文はリンク先参照】
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/