厚生労働省が今月末に自治体への補助金を打ち切る生後20カ月以下の国産牛への
牛海綿状脳症(BSE)検査が、検査を実施する全77自治体で8月以降も独自に継続されることが
わかった。厚労省は「科学的に安全」として検査終了を求めていたが、自治体側が消費者の
不安に配慮した。
朝日新聞が、食肉衛生検査所を持つ46都道府県(福井以外)と政令指定都市など33市の
計79自治体に8月以降の対応と予算額を聞いた。牛を扱っていない福島、石川両県を除く
77自治体がすべて、検査を続けるため今年度分の費用を手当てしていた。
その8か月分の費用は77自治体で計9000万円。4万1千頭分を負担する北海道が最も多く、
2000万円。道によると、30カ月前後で出荷される和牛に比べ、20カ月以下で食肉処理される
雄のホルスタインの割合が高いためという。道内の旭川市と函館市も200万円を超えた。
200万円以上を負担する自治体は、計14道府県市にのぼった。
厚労省は「20カ月以下の牛に感染リスクはほぼない」との立場。昨年8月には、すでに
継続方針を決めていた自治体を牽制(けんせい)するため「各地で検査の扱いに食い違いが
あれば混乱が生じる」と、今年7月末で検査を終えるよう求める通知を出した。
昨年度、国が出した全頭検査の補助は16億円。うち2億円が20カ月以下の牛にあてられた。
「検査継続は血税を無駄に使っているのと同じ」と厚労省監視安全課。
だが自治体側は、国の見解を理解しながらも、消費者の「安心」のために継続が必要と
判断した。「科学的にリスクは小さいとの評価もあるが、消費者の不安はぬぐえていない」と
北海道の担当者。栃木県は「他県がやるのにうちがやめたらどうなるか。格差を生じさせる
わけにはいかない」という。「国は消費者に安心してもらえるだけの説明をしていない」(金沢市)
という批判もある。
一方、来年度以降の継続には疑問の声も上がる。東北地方の県の担当者は「県内のハム工場
などで加工するため検査する20カ月以下の牛のほとんどは北海道産。県民が負担すべきか
議論はある。将来は生産者に負担を求めることも必要では」と話す。(石塚広志、熊井洋美)
〈BSE全頭検査〉国内で初めてBSE感染牛が見つかったのを受けて01年10月に開始。
厚労省は、それ以後検査した20カ月以下の牛約100万頭に一つも感染例がないことや、
食品安全委員会が05年5月に「20カ月以下の牛の感染リスクは低い」と答申したのを受け、
省令を改正して検査対象を21カ月以上に限定。だが自治体や消費者から不安の声が続出
したため、今年7月末までの期限付きで検査費を全額補助していた。
▽News Source asahi.com 2008年7月11日22時0分
http://www.asahi.com/politics/update/0711/TKY200807110325.html ▽厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/