★キングフィッシャー航空の親会社、スパイス・ジェット買収へ
インド飲料業界最大手のユナイテッド・ブリュワリーズ・グループ(UB)が、インドの格安航空会社スパイス・
ジェットを買収するという。近日中に、同社の2大株主との交渉に入る模様だ。
インドの航空業界では、最大手のジェット・エアウェイズが昨年4月、事業規模4位の格安航空会社
エア・サハラを買収。昨年末には、UB傘下で業界5位のキングフィッシャー航空(キングフィッシャー)が、
3位の格安航空最大手エア・デカンとの合併を決めた。今回の交渉が実現すれば、史上3度目の合併
協議になる。
インド最大の酒造メーカーが主体のUBは、「東洋のリチャード・ブランソン」と目されるビジャイ・マリヤ
会長の下で、2004年に格安航空会社のキングフィッシャーを設立。エア・デカンとの合併では、同社を
存続させたまま、社名をキングフィッシャーに変更した。今年3月には、インドで第2位の航空会社として、
新会社での業務を開始。現在の保有機総数は約83機で、1日に440の国内便を運行している。
スパイス・ジェットは2005年、デリー南西部のグルガオンで、国内線専門の格安航空会社として
設立された。現在は、インド国内で約11%のシェアを確保。米ボーイング製の飛行機を15機保有しながら、
1日に94の国内便を運行している。
また、ムンバイ証券取引所に株式を上場中。4日の終値は、前日比7.76%高の25ルピー(約62円)だった。
さらに、保有機数と運航便数の増加に向けて、株式市場から1億ドル(約107億5,700万円)規模の資金調達を
計画。計画の実現に向けて、ここ数カ月間、投資家を公募してきた。しかし現在まで、公募は実を
結んでいない。
スパイス・ジェットの大株主は、ドバイ政府系の投資ファンドであるイスティスマールと、英在住の
ブーロ・カンサグラ取締役一族。保有株は、いずれも発行株数の26.33%で、1株あたり158.40ルピー
(約394円)の市場価値を持つとされる。
複数の航空業界筋によれば、現在は、イスティスマールとカンサグラ一族に買収を打診中。両者の
保有株を購入できれば、ほかの株主から、さらに20%分の保有株を買い付けると見られる。もっとも、
この戦略自体は、キングフィッシャーとエア・デカンを合併に導いた戦略と変わらない。
マリヤ氏がスパイス・ジェットの買収に動けば、キングフィッシャーは、インドの航空業界へ十分な影響力を
持つと見込まれる。さらに、買収が実現すれば、UBグループはインド国内で40%のシェアを確保。重要な
事業部門に対して、共通の料金水準を設定することも可能になりそうだ。
ある情報筋は、エコノミック・タイムズの取材に対して、「キングフィッシャーは1カ月前から、発行株式取得の
可能性をめぐって、スパイス・ジェットと協議してきた」と説明。スパイス・ジェットについては、「新たな資金の
提供をめぐって、航空業界以外の投資家と交渉中」と話した。
カンサグラ一族とイスティスマールについては、「いずれもスパイス・ジェットから手を引く意向」と紹介。
「カンサグラは保有株を早く売りたがっている」としながらも、「イスティスマールの狙いは、市場価値に
見合った価格での売却にある」との私見を披露している。
http://indonews.jp/2008/07/post-724.html