食糧の輸出国が、価格高騰の原因の一つとされている輸出規制を緩和し始めた。
主要8カ国(G8)の中で唯一、輸出規制をしてきたロシアが1日から小麦や大麦の輸出税を緩和
するほか、ウクライナ、ベトナムも規制撤廃や輸出再開に乗り出した。
豊作見通しに伴う方針転換だが、北海道洞爺湖サミットの主要議題となるだけに、批判を
かわす狙いもあると見られる。
ロシアは穀物の高騰で昨年11月に小麦に10%、大麦に30%の輸出税を課し、今年1月には
小麦の税率を40%にあげた。しかし今年は豊作が見込まれ、ゴルデーエフ農業相はこのほど
「穀物への輸出税は7月1日以降は延長されない」との見通しを示した。
メドベージェフ大統領も、6月上旬にサンクトペテルブルクでの経済フォーラムで「輸出規制は
長期的に食糧問題を深刻化させる」と述べ、ロシアも高騰対策に貢献する考えを示した。
ロシア政府の方針は日本政府も確認済みだが、「全面的に撤廃するのか、税率を下げるのかは
わからない」(外務省ロシア課)としている。
また、ウクライナからの報道によると、同国は昨年秋から小麦、大麦などの輸出に制限枠を
設けてきたが、5月下旬に撤廃する方針を決めた。日本の外務省によると既に閣議決定しており、
官報にも掲載済みという。豊作が見込まれるためという。
コメの世界第2位の輸出国であるベトナムのズン首相は6月中旬、輸出を再開する方針を
業者に通知した。病害虫などの被害から政府契約分などを除いて輸出を禁止してきた。
今年の第3四半期までに350万トンの輸出契約の締結を許可しており、7月から実際に再開される
予定。
世界の小麦の輸出では、ロシアは11%(07〜08年見込み)で世界3位。ウクライナも1%(同)で、
有力な穀倉地帯を抱える。ベトナムのコメの輸出シェアは17%(同)でタイに次ぎ、輸出規制が
アフリカやアジアでのコメ騒動に影響を与えたとされる。
取引量が小麦などと比べて少ないコメでは価格の抑制効果も期待されるが、小麦については
当面、期待薄と見られる。「最大輸出国の米国の穀倉地帯が豪雨・洪水に見舞われたほか、
バイオ燃料への利用で飼料用のトウモロコシの高騰が続き、代わりに小麦の需要も増えている」
(農水省幹部)ためだ。
サミットでは、日本政府は輸出規制の自粛で各国首脳間の合意を取り付けようとしており、
ロシアなどの動きは追い風となりそうだ。日本政府関係者は「食糧高騰が世界的な問題になり、
批判が出てきたことが背景にある。ロシアはサミットを意識した可能性が高い」と指摘している。
輸出規制をしている国は、他にインドやアルゼンチンなど十数カ国ある。日本政府によると、
いずれも自国向け分の確保に精いっぱいで、輸出規制を緩和する動きは見られないという。
(大野正美=モスクワ、小山田研慈)
▽News Source asahi.com 2008年7月1日3時1分
http://www.asahi.com/business/update/0630/TKY200806300370.html ▽関連
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