関西の消費者が「生活防衛」色を強めている。16日発表の5月の京阪神地区の百貨店売上高は
3カ月連続の前年割れ。近畿圏のマンション契約率も5月は50%台に落ち込んだ。一方で
食品スーパーや国内旅行の需要は堅調。食品値上げや燃料高の影響で生活費がジリジリと
上昇するなか、限られた家計のやりくりを見直す動きが広がっているようだ。
近畿百貨店協会によると5月の百貨店売上高は京阪神地区の合計で1220億円と前年同期より
1.7%減った。前年割れは3カ月連続。京都地区が0.8%減、神戸地区が1.4%減にとどまる一方、
最大の消費地である大阪地区が2.0%減ったのが響いた。
大阪地区の入店客数は4%増えており、購入点数を減らしたり、安い商品を選んだりする
消費者が増えているもようだ。同協会も「ガソリン高などによる先行き不安から買い控えが
出ているのでは」と分析している。
大阪地区の売上高を品目別に見ると主力の婦人服・洋品がマイナス7.9%と6カ月連続の
前年割れ。ある高級アパレルは「1点10万円近い衣料品を購入する客層にとって物価高の
ダメージはそれほど大きくないはずだが、心理的な影響が出ているのでは」とみる。
美術品や宝石など高額商品の落ち込みで雑貨も2.9%減った。高額品の販売動向が影響しやすい
外商売上高は全分野合計で10.6%減少。一方で店頭は0.7%減にとどまった。
需要を喚起しようと高島屋大阪店は11日から大量発注などで仕入れ値を抑えた夏物商品
「ナイスプライス」の販売を始めた。通常より2―3割価格を抑えた。大丸も5月中旬から
独自企画商品の一部を「バリュープライス」として15―30%安く販売している。
一方、スーパーは食品部門が堅調だ。オークワの5月の売上高は衣料品や洗剤などの
住居関連が5%前後減ったが、主力の食品が約2%伸びて全体で微増を維持した。
平和堂も衣料品・住居関連が8%減で「肌着などの必需品は売れているが、高額商品が苦戦した」
(平和堂)。
ガソリン高の影響で、クルマでの来客が多い郊外店を中心に消費者のまとめ買いの動きも
出ている。「1回当たりの購入点数が2%前後増えている」(同)という。
外食店も郊外型の店舗は軒並み苦戦している。関西を中心に居酒屋「八剣伝」などを展開する
マルシェは5月の売上高が5%減った。「消費者の財布のひもは確実に固くなっている」
関西発の夏休み期間の旅行も海外から国内へのシフトが目立つ。JTB西日本(大阪市)の
7―8月の予約件数(6日時点)は国内が前年同期比10%増なのに対し、海外は6%減で推移している。
国際線の本体運賃に加算する燃油特別付加運賃が原油高で高騰。人数が多い家族客にとって
負担が重いことなどが敬遠されているようだ。
大阪市内の宿泊需要も低迷している。主要18ホテルの平均客室稼働率は5月まで8カ月連続で
前年割れ。4月の3.7%減から持ち直したものの、5月は0.8%減だった。「欧米からのビジネス客が
減った」(ヒルトン大阪)ほか、国内客も「週末のレジャー利用が鈍い」(高級ホテルの総支配人)
という。
▽News Source NIKKEI NET 2008年06月17日
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news000498.html http://www.nikkei.co.jp/kansai/img/img000070.gif http://www.nikkei.co.jp/kansai/img/img000299.jpg 大丸は夏のセール前に低価格商品「バリュープライス」を増やしている(16日午後、大阪・梅田)