インターネット通販の苦情や相談が、市場の拡大に伴い急増している。国民生活センターがまとめた
07年度の件数は過去最高の約8万6千件となる見通し。商品の未着や注文品の中身を巡るトラブル
が目立つ。市場参入が比較的容易なこともあって、業者の質や悪質業者への規制などに課題が多い
ことが裏付けられた。
05、06年度のネット通販(携帯電話も含む)の苦情・相談件数はそれぞれ3万9千件前後。
07年度分は2倍以上だったことになる。08年度も、5月下旬までの集計では過去最高の
07年度をさらに上回るペースだという。
国民生活センターによると、内容で目立つのは「代金を支払ったのに商品が届かない」「注文した
デザインやサイズと違うものが届いた」「代金を払った後に業者の倒産をネットで知った」など。
音楽や動画のダウンロード販売では、「無料の閲覧サイトだと思っていたらあとで数十万円の料金
を請求された」という相談も目立ったという。業界団体の社団法人・日本通信販売協会が設置する
「通販110番」(03・5651・1122、平日午前10時〜午後4時)に07年度に寄せら
れた相談・苦情内容も、商品の内容や返品・交換を巡るものが最も多かった。
ネット通販は、書籍販売などで知られる「アマゾンジャパン」や、商店街型といわれる「楽天」と
いった大手から、地方の小売店が生鮮品を販売するケースなどまで幅広い。取引に時間や場所の
制約がないという利点もあって、拡大が続く。市場調査会社「富士経済」(東京)によると、
ネットやテレビ、カタログなどを含む通販市場は08年は予測で5兆3687億円。このうち、
ネットと携帯電話の通販市場は右肩上がりの成長を続けており、3兆3千億円と見込んでいる。
だが、ネットやカタログ分を含む通販自体には、購入後の一定期間内なら無条件で契約を解除できる
「クーリングオフ」の制度は適用されない。返品しようとしても、「購入後は一切認めない」と
拒否されることも多いという。
経済産業省は今国会に、「通販でも、業者が返品の可否やその条件を広告していない場合、購入後
8日以内なら消費者の送料負担で返品・解約ができる」とする特定商取引法改正案を提出している。
業界団体の社団法人・日本通信販売協会は「料金前払いだけの会社と取引する時は信頼できる会社
でなければ注意した方がよい。ホームページの更新を頻繁にする会社もあるので、注文時の条件を
印刷することも大切」という。
一方、市場規模が約4200億円とされるテレビ通販についても、07年度の苦情・相談件数は
前年度比1.2倍の約2300件と、過去最高となる見込みだ。40代以上の女性が多く、健康食品
や美容器具、化粧品関係などの販売で、返品や返金、解約に関するものが多いという。
テレビ通販の最大手で、ネット通販も手がける「ジュピターショップチャンネル」(東京)の広報
担当者は「返品の条件を十分確かめ、不明な点があれば納得いくまでオペレーターに質問してほしい」
と話している。
●ネット通販の苦情・相談件数と市場の伸び
http://www.asahi.com/national/update/0531/images/TKY200805310219.jpg ◎ソース asahi.com
http://www.asahi.com/national/update/0531/TKY200805310217.html