「7月の東海北陸道の全通は、安房トンネル完成以来のビッグチャンスだ」
先月15日、高山グリーンホテル(高山市西之一色町)の社内の新年会で、
壇上から新谷尚樹社長(53)は従業員にこう呼び掛けた。
同ホテルは収容人員1000人を誇り、高山市内では最大規模。1997(平成9)年の安房トンネル開通後、
関東からの宿泊客が一気に増えたといい、今回も同様の効果を期待する。
全通に向け、準備を着々と進めており、4月には、総工費8億円をかけて改装中の和風本館を「天領閣別邸」として
リニューアルオープンさせる。
北アルプスを望む露天風呂付きの客室は従来の2部屋分の広さで、ゆったりとした空間を提供。
充実した客室を持つ北陸の温泉地のホテルに対抗する狙いがある。
設備投資だけではない。同ホテルは昨年、県内の宿泊施設で初めて、第3種旅行業の認可を受けた。
旅行代理店を通さずに独自の企画旅行の参加者を募集できるようになり、さっそく高山植物の見学や
白川郷の自然を学ぶツアーなどを試行した。いずれも好評だったといい、今年から企画を本格化させる。
「旅行で一番重要なのは、どこに泊まるか。これからは地域間競争の時代になる。
ホテルはお互い、切磋琢磨(せっさたくま)しないといけない」と新谷社長は力を込める。
全通に注目しているのは県内の観光関係者にとどまらない。
昨年12月、台湾最大の国際旅行見本市「台湾国際旅行博」に高山市がブースを出した。
同市の観光関係者らが、博覧会を前に台北市内の旅行業者や航空会社を回った時のことだ。
飛騨高山への誘客を狙い、地図を手に東海北陸道の全通をアピールすると、応対した航空会社の担当者から
こんな評価が返ってきた。
「高速道路がつながり、高山、白川郷、立山と周遊できるようになれば、中部地方は(台湾で人気の高い)北海道に次ぐ
市場になると予想している」。台湾での人気に応え、近く小松便を開設するとの説明もあった。
訪問団の一員で、外国人旅行者の受け入れに力を入れるひだホテルプラザ社長の堀則さん(59)は
台湾で高山の認知度は年々高まっている。全通が遅れたことも現地の旅行業者は当然のように知っていた」と
関心の高さを実感している。
年間420万人の観光客が訪れる高山市で、外国人の入り込み客数は10万7200人(2006年)。国別で最も多いのが
台湾からの旅行者で、4万8360人と半数近くを占める。
「1カ所にとどまらず広域を動く外国人旅行者にとって、全通は非常にメリットが大きい」と堀社長が話すように、高速交通網の整備は
旅行者の動きを変える。同時に、観光地を飛躍させる可能性も秘めている。
【第3種旅行業】
昨年の旅行業法施行規則の改正で業務範囲が拡大され、独自に参加者を募る「募集型企画旅行」が実施できるようになった。
出発地や目的地は隣接する市町村までに限られるが、地域に密着したツアーを組むことが可能になった。
〆News Source : 岐阜新聞Web
http://www.gifu-np.co.jp/kikaku/2007/nohi/3/nohi3_3.shtml