■親子向けイベントから育児相談まで使えます
少子化対策が叫ばれる中、東京都杉並区が就学前の子どもがいる世帯に、親子向けイベントや
育児相談など幅広い有料サービスに使える「子育て応援券」を配る独自の事業を展開している。
親子が出歩きやすい環境をつくり「希薄な地域コミュニティーの再生にもつなげる」狙いがある。
応援券事業は昨年6月スタート。一時保育などに使途を限定した自治体の利用券は各地にあるが、
個人から民間企業まで、多彩な事業者が提供するサービスから選んで使える方式は珍しい。
区内の主婦坂口裕子さん(32)は個人でサービスを提供する事業者の1人。
昨年10月から週1回、自宅マンションで「親子喫茶室」を開いている。毎回5、6組の親子が参加。
応援券1枚(500円分)でお茶とケーキを味わいながら、子育ての悩みなどを話し合う。
自ら1歳児の母親でもある坂口さん。「以前から親子が集える場が足りないと思っていた。
応援券は単なる金券ではなく、人とつながるきっかけになる」と話す。
自身の応援券は、他の事業者による親子向け体操講座やベビーシッターの利用に使っている。
区内の葬祭業「コムウェル」は“異業種参入”組。昨年の夏以降、葬儀のない友引の日に、
広い葬祭場で人形劇の公演や七五三の撮影会を開いている。人形劇には親子連れ150人が参加した。
「収支はとんとん」だが、区民が普段は縁の少ない施設を訪れれば、会社の知名度やイメージアップが期待できる。
同社の穐吉修取締役は「場所柄から敬遠されるかと思ったが、予想以上の参加者数。地域での存在感が高まれば」と話す。
≪9億円分を配布≫
杉並区は独身世帯が多く、結婚すると、より広い住居を求めて郊外に転居する傾向が強いことから、少子化が進行。
2005年には合計特殊出生率が0・71と過去最低になり、子育てをしやすい地域づくりが課題となっていた。
こうした背景から年1回、子ども1人ごとに0〜2歳で6万円分、3〜5歳で3万円分を交付する応援券が生まれた。
有効期間は2年間で、07年度は約2万人に計約9億円分を配布した。
対象サービスの登録は当初、131事業者の333件だったが、7カ月後の昨年末には293事業者の
760件と2倍以上に拡大。最近は利用者側から事業者を呼び込む例もあるという。
その一方で、申し込みが多い一時保育などは予約がとりにくく、「利用したいものがない」といった不満も聞かれる。
区の斉藤俊朗子ども・子育て計画担当課長は「多様なニーズに合ったサービスが必要。父親を巻き込む企画なども
増やしていきたい」と話している。
ソース
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200801220020a.nwc