世界で初めてクロマグロの「完全養殖」に成功した近畿大学水産研究所(白浜町)は9日、
昨年7月中旬に人工ふ化した第3世代の「孫マグロ」を、養殖用の稚魚として初めて出荷したと発表した。
天然資源の減少で、漁獲制限が厳しくなる中、研究所は天然に頼らない、人工産だけの供給を目指しており、
「一歩前進した。来年は出荷量をもっと増やしたい」と話している。
昨年12月6日、熊本県天草市の養殖業者に1500匹出荷した。
出荷時は全長44センチ、重さ1・2キロ。輸送の際、23匹が死んだ。
研究所によると、水温などの環境によるが、2年後には全長120センチ、重さ30キロの販売できるサイズまで成長するとみられる。
研究所は串本町大島にある大島実験場でクロマグロの養殖を研究している。
2002年、人工ふ化で育った親魚から第2世代の「子マグロ」が誕生。その子マグロから孫マグロが生まれた。
孫マグロは昨年8月、陸上いけすから海上いけすに移した際は1万9437匹だったが、約1カ月後に3分の2ほど死んだ。
11月中に1500匹を鹿児島県奄美大島にある奄美実験場に移した。
人工ふ化の稚魚を求める養殖業者は多く、研究所での稚魚の生産量が増えるとともに、
輸送時に死ぬ数を減らす技術が進歩したことから、研究所は試験的に1業者に出荷した。
孫マグロの残り約3100匹は引き続き海上いけすで育て、「近大マグロ」として食品用で販売する。
人工ふ化から育てたクロマグロに産卵させ、ふ化させる「完全養殖」に成功しているのは現在でも、世界で近大だけだという。
岡田貴彦・近大水産養殖種苗センター大島事業場長代理(51)は
「クロマグロを飼育下で繁殖させることで、天然資源を減らさず、消費者に供給できるようになる。
放流すれば資源を増やすこともできる。今後、稚魚の生存率を高め、生産のコストダウンを図ることなどで、
実現を目指したい」と話している。
ソース
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=138541