三菱重工業と経済産業省は、地球温暖化対策に有効な「CCS(二酸化炭素回収・貯留)」技術
を活用し、発電所などの排ガスから回収した二酸化炭素(CO2)を油田に埋めて産油量を
増やすプロジェクトを官民一体で産油国に売り込む。第1弾としてCCSの導入を表明している
UAEを4日から訪問する甘利明経産相が、プロジェクトの受注を働きかける。三菱重工の
受注が成功すれば、世界初の事業化となる。
CO2削減と原油の増産の“一石二鳥”が図れるCCSは、地球温暖化対策の切り札と
期待されている。欧米企業も事業化に向け技術開発を進めており、世界的に激しい受注合戦が
繰り広げられそうだ。
三菱重工では排ガスからCO2を分離・回収する技術を開発。すでに石油化学プラントの
排ガスから回収したCO2を尿素肥料の原料とする事業を立ち上げており、マレーシアや
インド、バーレーンで技術供与契約などを獲得した実績がある。
回収したCO2を地中に埋める技術については、2005年に国際石油メジャーの
ロイヤル・ダッチ・シェルと提携し、事業化の準備を進めてきた。
CO2を油田に貯留すると、岩盤などにこびりついた石油を柔らかくし、産油量を増やす効果が
ある。産油国の発電所でCO2を回収し油田に埋め、増産された石油で発電を行うという
「循環型システム」の構築も可能になる。
ただ、これまではCCSには「経済的な動機付けがなかった」(経産省)ことから、事業化は
実現していない。CO2の分離・回収には1トン当たり5000-1万円の費用がかかり、
1日1万トンの排ガスが出る発電所での事業化は採算が合わないためだ。
しかし、原油価格が1バレル=90ドルを超える水準まで高騰。CCSには、CO2、1トンの
貯留で3-5バレルの増産効果があるとされ、増産分でCO2の分離・回収費用を十分に
賄うことができるようになってきた。この結果、「石油会社がCCS導入を検討し始めた」
(友国天雄・三菱重工部長代理)という。
三菱重工では事業化の可能性が高まったと判断し、UAEのほか、サウジアラビアなどの
産油国での売り込みに乗り出し、経産省もこれを後押しすることにした。
政府は、安倍晋三前首相が打ち出し、今年の先進国首脳会議(北海道・洞爺湖サミット)などで
提案する50年に温室効果ガスを半減する目標達成に向け、発電所から出るCO2の約9割を
地中に貯留することができるCCSを普及促進する方針。このため、まず産油国で世界初の
事業化を実現したい考えだ。
米政府も12年に10億ドル(約1130億円)を投入し国内で電力会社など民間12社と
協力しCCSの事業化プロジェクトに乗り出すことにしており、事業化競争が激化している。
【用語解説】CCS(二酸化炭素回収・貯留)
Carbon dioxide Capture and Storageの略。
発電所などの排ガスを溶剤に通してCO2を分離、回収する。回収したCO2は地中や
海底に送り込んで貯留。油田に貯留すれば、産油量の増産効果がある。国際エネルギー機関
(IEA)は2050年のCO2排出削減量320億トンのうち、約20%をCCSで
削減できる予測している。
ソースは
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200801040001a.nwc 依頼を受けてたてました。