関西文化学術研究都市(学研都市)に立地する研究機関が地域の小中高校との交流事業に乗り出す。
積水ハウスや同志社大、奈良大学などが参加し、来年4月から教育現場に先端技術分野の研究者を派遣する。
学研都市は研究機関が集積する一方、宅地整備も進んできた。両者の交流を活性化することで、
街づくりの重点を都市機能の向上に移す考えだ。
学研都市には現在までに100以上の研究機関が進出。
住宅地として整備した文化学術研究地区の人口も約23万人に増加し、小中高校も約300に達している。
交流事業は「科学のまちの子どもたち」との名称で、3府県の産官学で組織した
関西文化学術研究都市推進機構が主導する。
まず、研究者を派遣する側の大学や立地機関から九組織を含めた20団体が参加。
授業内容は座学や科学実験、フィールドワークなどで構成。物理学史の講義やレーザー光を使った室内実験、
近辺の河川の水質検査などを想定している。
小中高校からの要望を取りまとめた上、各機関に割り振り、派遣する研究者を選ぶ。
当面は10―20人程度の研究者の派遣を目指す。
詳細は今後固めるが、総合的学習の時間や課外学習の時間を利用し、研究者が学生にロボットやIT(情報技術)、
バイオ技術に関する基礎知識を教える。
学研都市推進機構を中心に教材の開発も手掛け、化学実験の動画データなどを授業で使いやすい形に
変えて小中高校に無料で配布する。
研究者の派遣に加えてネットを活用した交流や施設の開放などにも取り組む。
手始めとして11月からは都市内の住民を対象に、地域ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を立ち上げ、
住民への遠隔教育を始めた。同SNSへの現在の加入者は約150人だが、今後は1000人程度まで規模を拡大する。
ロボットやITの研究で世界に知られる国際電気通信基礎技術研究所(ATR)や情報通信研究機構(NICT)などの
立地機関には、施設の開放を要請する。
専門性が高い施設を見る機会を増やすことで、学研都市が得意とする研究分野への学生の関心を高める。
学研都市は昨年、約10年間の街づくりの指針である「サード・ステージ・プラン」を策定済みで、
今回の交流事業も同プランに基づき展開するもの。
今後も街のイメージ向上に取り組むほか、最先端技術の研究や実験を住民を対象に実施し、
技術の有用性を広くアピールして企業との提携を進める。
筑波研究学園都市(茨城県つくば市)は建設決定から約40年で、高速鉄道「つくばエクスプレス(TX)」が開通。
駅前にショッピングセンターなどの整備が加速しつつあるが、研究機関は国関連の組織が中心で
地元との交流が乏しく街づくりの遅れにつながったとの指摘もある。
学研都市推進機構などでは地域住民との距離を縮めることが街づくりの促進につながると見ており、
今後もこうした交流支援に取り組む考えだ。
ソース
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news001640.html