>>3の続き
さらに確認審査に要する期間がべらぼうに延長されたことも安全面の憂慮につながる。従来、確認
申請が出されてから2〜3週間で確認済証は下ろされていた。手続きの煩雑化に伴い、この審査
期間が35〜70日、さらに適合性判定に35日程度かかるようになり、最短で2か月以上を要する。
計画変更があれば、工事を止めて35日以上の追加……。
デベロッパーは金融機関から融資を受けて土地を仕入れたら1日も早く確認を取って「販売開始」に
踏み切りたい。何カ月も土地を寝かせていたら金利ばかり背負う。着工前の審査期間の長期化は、
必然的に「工期短縮」の圧力を生むだろう。デベロッパーは、販売開始と同時に入居時期を顧客に
約束する。これは絶対条件となる。もしも、予期せぬ出来事で計画変更、35日以上の工事中断となれば、
再開後は突貫工事に次ぐ突貫工事。雨が降ろうが、槍が降ろうが、コンクリートを打ちまくる。現場で
どんな施工が行われるか……想像するだけで空恐ろしくなる。
私は拙著『マンション崩壊』で都市再生機構が引き起こした多摩ニュータウンの大規模欠陥事件を
追った。その背景には常軌を逸した工期短縮の圧力があった。あの惨劇がくり返されないことを
祈るばかりだ。建築基準法第1条は、こう記している。
「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、
健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする」
建築確認は、この目的を果たすための制度なのである。
国民にとって最悪のシナリオは、指針で煩雑化させた運用に不動産・建設業界がついてこられず、
いつの間にか制度は骨抜きにされ、手数料ばかりが徴収される仕組みが残るパターンだ。そもそも
建物の用途に関する「集団規定」と構造に係わる「単体規定」を一緒くたにして審査する確認制度が、
必要なのだろうか。
矛盾だらけの確認制度は、出発点に強い縛りをかけるだけではとうてい変革できない。建築主の
責任を明確にしたうえで、建物の安全性を含む機能・性能を見極めるポイントを絞り込む方向への
転換が求められる。
今後、確認制度が、どう運用されていくか。大勢の方に注視してほしい。
−以上−