【講演】「放送と通信の融合が進まないのは、放送事業者だけの責任ではない」--慶應大の岸准教授[07/11/29]
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■人材が育たないという深刻な問題
企業にとって何よりも深刻なのは、人材が育たないという問題だ。成果主義が人材育成を
阻害しているという声が多くあった。次のような声である。
「若年層を指導する立場としては、彼らに“考えること”“失敗を恐れないこと”などを
重視し、長期的な意味での自己成長をしてほしい。仕事で成果を出すために効率的な方法だけを
追求する人間に何の魅力があるのか。成果主義は近視眼的で機会主義な人物を養成してしまって
いる元凶に思える」(課長クラス 35-39歳)
「若手や新人を教育する際に、彼らに結果だけを求め、かつ指導する側も自己の成果にこだわる
あまり、教育の中身が中抜けになりがちである」
(係長/主任クラス 40-44歳)
人が育たない企業に将来の成長戦略は描けない。極論すると、その企業には将来がないと
言っても過言ではない。だが、多くの日本企業が導入した成果主義には、中長期的に人を
育てるという観点が抜け落ちていた。
慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科の高橋俊介教授は、「本来の成果主義は、
仕事の成果に応じて報酬に差をつけることで、仕事に対するやる気を高めてもらうもの。
だが、相談を受けた企業の中にそういった狙いで導入しようと考えていたところは1社も
なかった」と言う。
■「人件費抑制」策だけに終わらせてはならない
では何のために成果主義を導入したのか。「90年代半ばから企業の中で45歳以上の社員の
比率が増え始め、多くの企業は“このまま年功制で賃金を支払っていると人件費倒産する”
という危機感を抱いた。そこで、人件費削減策を早急に実施しなければならなくなった」
(高橋教授)。企業はその対策としてリストラを進めると同時に、人件費抑制策として
成果主義を導入した。
アンケートでも、そうした成果主義導入の狙いを見透かした声が多く寄せられた。
「目標や昇格用件などが全く不明確であり、成果主義という言葉だけを取り入れただけで、
その実は人件費抑制だけだった」(係長・主任 40-44歳)
「客観的な数値に基づくものではなく、上司の主観的な判断に基づくものである。給料を
下げるための手段としか思えない」(係長/主任クラス 35-39歳)
日本企業が導入した成果主義は、当初から組織を活性化しよう、社員の成長に役立たせよう
という狙いはなかった。人件費抑制が最大の目的だから、給与を減らすための目標管理制度に
ばかり重点が置かれることになる。
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