前半をかなり省略しています。ソース全文は
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20071031/139240/ http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20071031/139240/?P=2 [1/2]
ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロベニアなど「新しい欧州」の国々がEUに加盟した
2004年5月、フランスやドイツなど「古い欧州」のEU拡大論者たちは、期待感を込めて
こうつぶやいた。中欧諸国においてポーランドは、人口3800万人、面積31万平方キロ超を
誇り、近隣中欧諸国と比べてずば抜けて大きく、政治経済でも存在感がある。
ところが、2005年12月にレフ・カチンスキー氏が大統領に就任し、翌年7月に双子の兄が
首相に就いた頃から、ポーランドは国際社会のなかで独特の異彩を放ち始めた。
国内では、「不正撲滅」を公約に掲げ政権を取ったが、行き過ぎた面もあったようである。
報道関係者や公務員など、推定70万人に対して、共産党時代の秘密警察関係者を洗い出し
粛清しようとした、との報道が世界中を駆け巡った。
また、対EU外交政策についても、ポーランドの年配の有権者には受ける内容でも、フランス
やドイツなどの「古い欧州」の国々ではかんばしい評価を受けていない。
そんな状況の中、今年10月21日の総選挙では大方の予想を覆して中道右派の最大野党
「市民プラットフォーム」のトゥスク党首が、カチンスキー首相を倒した。トゥスク氏は、
15%のフラットタックス(一律課税、参考記事はこちら)と小さな政府を掲げて、無党派層
を動かしたのだ。
今回の選挙では、1989年の民主化以来、最大の投票率55%を記録し、特に若者たちの
投票率が高かった。しかも西欧などに住むポーランド人の在外投票も殺到したという。
恐らく、西側EU加盟国に移住した若いポーランド人たちは、かの地でEU拡大の本質的な
意味を肌で感じ、自分の母国が「異形の国」扱いを受け続ける屈辱に耐え切れなくなった
のではないだろうか。
■頭脳流出とスキルのミスマッチ
現在世界中に住むポーランド人2000万人のうち、欧州には200万人在住と言われるが、
このうち医者や看護師、教師など特定のスキルを持った人たちを中心に推定で80万人が
2004年のEU加盟後に流出した。そのうち、50万人超が英国へ流れ、それ以外は
アイルランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、イタリアなどへ、より高い給与を
求めて移動した。
問題は、ポーランドで資格を要する仕事を持っていた人たちが、移住先では必ずしも同じ職
に就けていない点にある。英国を訪れると、建設現場やホテル、レストランなど、至る所に
ポーランド人を見かける。筆者は試しにロンドンのホテルの受付嬢たちに、ポーランドに
いた時の仕事を聞いてみたが、やはり教員や医師と答えた人たちが多数いた。医者が日雇い
労働者になることさえあるという。
これではいくらEU加盟国民の権利とはいえ、「出稼ぎ」と揶揄されても仕方がない。しかも、
ポーランドの将来にとってはマイナスだろう。ポーランドでは、医者や教師などの政治的
発言力が弱く、給与レベルが先進国と比べて10分の1程度と低く、その状況が長い間改善
されていない。
-続きます-