昆布の人気が高い大阪で、高級昆布商品の不足から、小売業者が販売休止を予定したり
値上げに踏み切るなどの“異変”が相次いでいる。
国内生産9割を占める北海道で、今年の水揚げ量が過去最低となる見込みだからだ。
特に最高級とされる天然白口浜(しろくちはま)真昆布は例年の1割に満たない50トン以下に。
価格は、昨年に比べキロあたり1000円以上高騰し、6000円に迫る勢いで、
鍋や歳暮、お節といった需要期の食卓を直撃しそうだ。
真昆布は、道南の函館市から室蘭市にかけ採れるものを指す。
中でも函館市の南茅部(かやべ)地区周辺産は白口浜と呼ばれ、
くせのない甘口のだしがとれるため特に大阪で人気が高い。
「7月20日からの今年の漁は、初日の45分で終わりました。それも所属する漁船280隻のうち、
代表24隻しか出していません。何十年も経験のある漁師も、ここまでひどいのは初めて」
南かやべ漁協尾札部支所の坂本敬二支所長(54)はこう嘆く。
昨年10月7日、道南を低気圧が襲い、岩盤に吸着する天然昆布は大しけで9割以上が流され、
壊滅状態となった。
白口浜でも最上位の質と量を誇る尾札部では、例年約30トンある天然物の漁獲量が、
今年は500キロほど。南茅部全体でも例年の約600トンから50トン以下に落ち込んだ。
「昆布は1年ごとに豊漁、不漁を繰り返す。今年はもともと不作にあたる年だったが、
予想を上回った」と坂本支所長は話す。
低気圧の影響は南茅部にとどまらず、同じ昆布の産地、日高や釧路にも及んでおり、
北海道水産振興課によると、道全体で例年2万トンを超える漁獲量が、
今年は1万7000トンにとどまり、過去最悪だという。
昆布は輸入が自由化されていないため、外国産の輸入量は2200〜2300トン程度。
このため北海道産が、昆布全体の価格を左右し、天然白口浜真昆布だけでなく、
道産昆布全体でも卸値で2倍をつけるものも出ているという。
こうした事態に、白口浜真昆布を原料にする塩昆布やつくだ煮で知られる老舗「神宗(かんそう)」(大阪市)は、
来年1月から高島屋泉北店など3売り場を休止することを決定。
さらに昆布(角切り)を使った単品商品などの販売を一時中止することも決めた。
一方長池昆布(同)では、今月から全商品を1割値上げした。
主力商品は2年分のストックがあるためすぐに影響はないという。
しかし野元次郎社長(57)は「一部の商品は年末までもたない。売り切れたら欠品にせざるをえない。
一時的な不漁ならいいが、海水温などと環境と関係があるのかもしれない。
来年も心配だ」と話すなど、当面業界の不安は払拭(ふっしょく)されそうにない。
ソース
http://www.sankei-kansai.com/01_syakai/sya110610.htm