味やメニューだけでなく、社内の風土もすべて抜本的に見直す――。民事再生法の適用を申請した
ラーメン一番本部(大阪市)からの事業譲渡により、ラーメン分野へ進出する吉野家ホールディングス
(HD)が今後の方針を明らかにした。
民事再生法の適用でラーメン一番本部は清算、吉野家HDが約5億円で事業を買い取る。従業員は
そのまま引き継ぎ、190あった店舗のうち優良物件と目される約130店舗を引き受けた。この資産を使って、
吉野家HDはラーメン店チェーンの展開に乗り出す。牛丼の吉野家、寿司の京樽、うどんのはなまるなどに続く事業となる。
●急成長のリスクを警戒
吉野家ディー・アンド・シー常務だった渡部政男氏を中心に、吉野家の店長十数人が立て直しに当たる。
既にスープなどの改善を始めた。「とんこつ味は、味を一定水準に保つのが難しいと聞いている。まずは、
醤油味で他社に負けないラーメンを作っていく」(経営戦略を担当する吉野家HDの加藤建司専務)。
ラーメン一番本部は1997年4月に加藤博一氏が創業、1杯180円(税抜き)という低価格ラーメンを売りにする
「びっくりラーメン」のブランドでチェーンを展開。ところが急激な出店攻勢が資金や人材の不足を招き、
売り上げが激減して経営に行き詰まった。そこで、加藤氏は支援を吉野家HDに求めた。
実は吉野家HDは、支援要請を1度、断っている。今年春のことだ。加藤氏は吉野家HDの安部修仁社長と
面識があり、経営譲渡を持ちかけた。これを受けて、吉野家HDの加藤専務は都内のびっくりラーメンに足を運んだ。
「商品力があれば、お客様の支持が得られるので再建の可能性はある。しかし、味が決定的にダメだった」。
もう1つ、吉野家HDが警戒したのが、急成長の歪みという外からは見えにくいリスクだ。「勢いだけで成長して
いただけに、内部には様々な問題を抱えているだろうと容易に推測できた」と加藤専務は話す。
このあたりが、過去に急成長で牛肉の仕入れが追いつかず、会社更生法適用を申請した経験を持つ吉野家らしい
“したたかさ”と言える。
実際、吉野家HDが内部を調査すると、数多くの問題が見えた。来店客の声では「携帯電話でおしゃべりしながら
調理していた」「接客態度を注意したら逆ギレされた」など、店員教育が行き届いていない様子がうかがえた。
また、原価計算もできていなかった。原材料の仕入れ金額は分かったが、自社工場での製造や店舗への配送などを
含めた製造原価が管理されていなかったのだ。こうした体制を一新し、ラーメン事業を軌道に乗せていく考えだ。
>>2-5あたりに続く