(記事抜粋)
中東産油国は、いずれ石油資源が枯渇する時が来ることを見越して経済の
「脱石油」化を目指している。
ドバイ政府系の投資会社ドバイ・インターナショナル・キャピタルのサミ
ール・アル・アンサリ最高経営責任者(CEO)は「ドバイは石油ガス中心
の経済から多角化を進め、金融センターの育成や海外投資に力を入れている」
と話す。
投資総額は約70億ドル(約8000億円)に上る。現在の投資先は英大手
銀HSBCなど欧米企業が中心だが、アンサリ氏は「買収より少数の株式を
保有して戦略的に投資するのが我々の方針だ。日本企業にも関心がある」と
いう。
今年4月下旬から5月初めにかけて、安倍首相と御手洗冨士夫経団連会長
が率いる財界ミッションがサウジアラビア、クウェート、カタール、UA
Eなど中東諸国を歴訪した際は、日本に中東への積極的な投資を求める要請
が相次いだ。産油国共通の深刻な問題である若者の就労機会の不足を解消す
るためにも、産業構造の転換が急務だからだ。
UAEが金融センターの育成と並んで力をいれているのが観光開発だ。
ドバイは中心部から十数キロ・メートルの地点にある北方の海岸沿いにヒル
トンなど欧米系の高級ホテルが立ち並び、一大リゾート地区を形成した。
沖合ではヤシの木の形をした人工島パーム・ジュメイラが建設中だ。ドバイ
政府系の投資会社イスティスマールが買収した英国の華客客船「クイーン・
エリザベス2世号」は、09年からここで洋上ホテルとして「第二の人生」
を送る予定だ。
隣国カタールも観光開発に熱心で、国際空港を拡張し、中東のハブ空港の
座をドバイ空港と競っている。
■新たな収益源 これまで外国の株式や国債など金融商品などへの投資が
主体だった中東産油国が、先進国企業や資産への投資を増やしているのは、
石油輸出に代わる安定した収益源を確保するためだ。
今夏、米高級衣料品店バーニーズ・ニューヨークを巡り、日本のファース
トリテイリングと1か月以上にわたった買収合戦に競り勝ったのはドバイの
イスティスマール。カタールやサウジアラビアの政府系ファンドも積極的に
欧米企業の株式などを買い進めている。
米証券モルガン・スタンレーの推計によると、国際投資に積極的な世界の
政府系投資ファンドのうち、最大はUAEのアブダビ投資庁で、資産規模は
8750億ドル(約100兆6250億円)。以下、シンガポールやノルウ
ェー、中国、ロシアなどのファンドに続いて、700億ドル(約8兆500
億円)の資産を持つクウェート投資庁が7位に入っている
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20070925mh04.htm