外資系投資ファンドや、競合企業による敵対的M&A(企業の合併・買収)に対抗する有効な
買収防衛策として、企業の自社株買いが急増している。世界的な製鉄所再編の中で、新日鉄が
自社の“筆頭株主”になるなど、上場企業の多くが大規模な自社株買いを進めている。
今年度の自社株買いは、金額で4兆円に達し、過去最高となるのが確実な状況だ。
自社株買いは、市場に流通する株式数を減らすことで、株価を高めて安定株主をつくるほか、
敵対的買収者による株式の買い占め行為を難しくする。外資の日本企業買収に道を開いた5月の
三角合併解禁や投資ファンドの台頭を背景に、幅広い業界で行われている。
株式の流動性をなくしてしまう経営陣による買収(MBO)や、事業提携などとは無関係の同業
他社や系列企業との株式持ち合いに比べ、株主還元につながる買収防衛手段だ。
野村証券金融経済研究所によると、今年4〜8月の日本企業の自社株買い実施額は2兆
1200億円に達し、5カ月間で、過去最高だった昨年上期(4〜9月)の2兆800億円を上回った。
8月の株安局面では、武田薬品工業、JFEホールディングス、キヤノンなどが1000億円を超える
自社株買いを行い、1カ月の実績としては、平成17年9月の7560億円と並ぶ、7500億円規模
になった。
世界再編の波にさらされている鉄鋼業界は、最大手の新日本製鉄が4月以降、約900億円の
資金を投じて1億株以上を取得した。自社株保有率を発行済み株式数の5.9%(3月末)から
7.5%(6月末)へと高め、筆頭株主になった。
同社は自社株を消却せずに、金庫株として保有しており、買収防衛だけでなく、「グループ再編や
他社との資本関係の強化にも対応できる」(同社)と説明する。
製薬業界も、アステラス製薬が8月下旬から、450億円を投じて最大830万株の自社株買いを
実施。2年前から自社株取得と消却を進めており、今回のものと合わせ、自社株買いで株式市場
から1割の株式を買い戻す計算になる。
大和総研が、7、8月の自社株買い企業を調べたところ、自社株買い後1週間で、東証株価指数
(TOPIX)が平均で3ポイントほど上がる効果があることが分かった。
6月の株主総会後は沈静化しているが、外資系投資ファンドなどによる日本企業の買収脅威は
消えておらず、株安局面での自社株買いは、さらに加速するとみられる。
ソース:
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070917-00000902-san-bus_all