若い女性のものとみられがちだったファッション誌の世界で、
初の「50代」女性誌が次々と登場しつつある。
すでに40代向けも増えているが、かつてはおしゃれを卒業し、「おばさん」と見られていた
中高年女性が今、注目されるのはなぜなのか。ファッション誌の“成熟現象”を探った。
1日に創刊された「eclat(エクラ)」(集英社)はフランス語で
「輝き、きらめき、鮮やかさ」を意味する言葉だ。
対象年齢は、40代後半から50歳前後で、創刊号は8万3000部。
ファッション、美容、カルチャーなどを様々な角度から取り上げた編集は、
こだわりの強い世代を意識した作りだ。
初の「50代」女性ファッション誌として注目を浴びる同誌の田中裕則編集長(51)は
「今のこの世代はとても元気で、年齢を重ねても『かわいい、きれい』と言われたいと感じている」と話す。
50代向け女性ファッション誌はこのほか、実用性も重視した
「クロワッサンPremium」(マガジンハウス)が10月に、「HERS」(光文社)が来年3月と、
創刊予定が相次ぐ。その理由について、「クロワッサンPremium」の竹内正明編集長(57)は
「アンノン族世代の成長」をあげる。
1960年代までの女性向け雑誌には洋服の型紙が付録として付き、
当時の若い女性は自分で作った服や、オーダーメードの服を着るのが普通だった。
だが、70年に創刊された「an・an」は、「おしゃれな既製服」を提案。
消費社会の本格的な到来とも相まって、当時の10〜20代女性のライフスタイルを一変させ、
71年創刊の「non・no」とともに、両誌を手にして旅する女性を指す「アンノン族」という流行語も生んだ。
「その世代が50代になり、自分たちに合った雑誌を求めている」(竹内編集長)というわけだ。
出版科学研究所の調べでは、今年上半期の女性誌全体の発行部数は、前年同期比5・8%減と不振が続く。
30代向けも、2004年ごろに、団塊ジュニアを狙った女性誌の創刊が相次ぎ、話題になったが、
同13・1%減と苦戦を強いられている。
そんな中、今年3月には「marisol」(集英社)など40代向け女性誌が創刊され、
ターゲット年齢の拡大は進んでいる。「40代でもかわいい」路線を前面に押し出した
「STORY」(02年創刊)は、「外へ出ないときれいになれない」というキャッチコピーを打ち出し、
主婦も多いこの世代の意識改革に成功、毎号約26万部を売り上げる。
しかし、「STORY」以外の各誌は創刊号こそ好調だったものの、2号以降は苦戦している。
出版界に詳しいフリーライターの永江朗さん(49)は、
「50代は、情報の入手先は主に雑誌という文化で育ってきた」と指摘。
中高年女性の動向に詳しいライター、島村麻里さん(50)も
「世界一長い残り時間を持ち、自分探しに熱心な日本の中高年女性は、
ヨン様のおっかけ現象などを見ても、『年だから』と閉じこめていた欲望を
表に出すようになっている」と話す。潜在的な需要が見込める世代であることは間違いなさそうだ。
いずれにせよ50代は、雑誌とともに育ったとはいえ、自分なりの価値観を確立している世代。
それだけに、各誌がこの市場で成功するかどうかは、決して楽観を許さない状況だ。
読売新聞より一部抜粋
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20070903bk02.htm?from=os1