企業の自社株買いが急増している。野村証券金融経済研究所によると、2007年
4─8月の自社株買いは約2兆1200億円。07年度では4兆円を超え、
過去最高になる可能性もあるという。
マーケットも需給改善につながるとして好意的に受け止めている。
世界的な信用収縮懸念の広がりで株価が急落するなかで、企業の大型の自社株買い
が続いている。
野村証券によると、自社株買いのこれまでの過去最高は06年度の3兆9800億円。
今年は4─8月の5カ月間で2兆1200億円が実施され、06年の上半期(4─9月)
分2兆0800億円をすでに上回った。
8月は特に米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題を
きっかけに株価が急落するなかで約7500億円と過去最大規模の自社株買いが
実施された。
企業側は自社株買いの理由について「資本効率の向上を図るとともに将来の株式
交換など機動的な資本戦略に備える」(キヤノンとして株価を意識したものでは
ないとするが、額面通りに受け取る市場関係者は少ない。
野村証券金融経済研究所・投資調査部ストラテジストの西山賢吾氏は「自社の株価
が割安になったと判断した企業が自社株買いを実施したことが額の増加につながった」
と指摘する。
理論上、自社株買いは株価に中立というのが一般的な認識だ。需給面での改善に
つながるほか、配当面でも株主にメリットがある一方、キャッシュを振り向ける
有望な事業がないための自社株買いとも受け取られるためだ。
ただ現状では株式市場は自社株買いを好意的に受け止めている。「自社株買いは
株価がこんなに安いとのメッセージを市場に送ることができる。8月23日に
自社株買いを実施する前の三菱商事の益回り(株価収益率の逆数)は8%を
超えていた」(新光証券エクイティストラテジストの瀬川剛氏)。
三菱商事株は自社株買いを受けて急伸、3日までに約11%上昇している。
サブプライム問題で投資家の手が縮こまるなか、自社株買いの増加で事業法人が
大きな買い主体となっているという事実もある。東京証券取引所がまとめた8月
第4週(8月20日─8月24日)の3市場投資主体別売買内容調査によると、
2224億8700万円と買い越し額はトップだった。
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>>2-10あたりに続きます)
ニュースソース:ロイター
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-27698620070903 (
>>1の続き)
もともと、上場企業の間では株主還元の意識が徐々に高まっているほか、株価
引き上げによって有効な買収策にもなるという思惑も働く。「株価を意識して
いるというメッセージを市場に出すことで株価の下支えにつながる」
(準大手証券投資情報部)という。
大企業で自社株買いが増えている点も今年の特徴だ。07年4月からの5カ月間
で、大型の自社買いを完了した企業には、三菱商事(1500億)、JFEホール
ディングス(1200億円)、住友商事(1050億円)、NTTドコモ
(1030億円)、キヤノン(1000億円)、新日本製鉄(1000億円)と、
大企業が名を連ねる。
野村の西山氏は「今後の株価水準が影響する可能性はあるものの、堅調な企業収益
の拡大が見込まれ、かつ株主還元意識が高まっているなかでは、自社株買いは順調
に実施されると考えられる」と述べている。
(了)