新たな輸出用水産物として注目されているゼロ歳のサバ(小サバ)の漁獲は、サバの資源保全に
マイナスである上、結果的にサバ漁の大幅な減収につながるとの解析結果を東京大学海洋研究所の
勝川俊雄・助教らが24日までにまとめた。小サバを大量に漁獲すると、数年後には高値で売れる
大型の成魚の量が減ってしまうためで、勝川さんは「近年、成魚の価格は上昇傾向にあるのだから、
短期的な利益だけを追求すべきではない」と指摘しているが、国は漁業経営上好ましいとの立場だ。
日本周辺のサバは1980年代から減少傾向が続き資源量が低迷。産卵能力のある親魚が減り、
小サバが多く捕られるようになった。これが近年、大量に輸出されるようになり、2006年には
全漁獲量の3分の1に当たる18万トン余が中国やアフリカ諸国に輸出された。輸出向け小サバの
水揚げは銚子(千葉)、小名浜(福島)、石巻(宮城)などが多いという。
勝川さんらは、年齢ごとのサバの死亡率や価格などを基に、小サバを禁漁にする場合と漁獲量を
倍増させる場合とについて、産卵可能な親魚の数や漁獲利益を試算した。
その結果、小サバを禁漁にすると3年後には親魚の量が約50%増加、単価が高い大型サバが多く
捕れるようになり、サバ漁全体の利益は42%増えることが分かった。
逆に小サバ漁獲が今のペースで増えると、サバ漁全体の収益は現状より42%減。親魚の量も
46%減るとの結果が出た。
水産庁は「小さいサバは、日本ではほとんど価値がつかないが、輸出すれば非常に高い価値が
あり、漁業経営改善に役立つ。狙って漁獲することは資源管理上好ましくないが、自然に小型の
ものが入った場合、輸出することは何の問題もない」と小サバ輸出に前向き。
<デスクメモ>小サバの輸出 小サバは国内では飼料用で安価だったが、近年、より高値で
売れる中国やアフリカに輸出されるようになった。2002年には4000トン余だった輸出量が、
05年には約5万8000トン余、06年には約18万トンと急増。新たな輸出用水産物として注目され、
07年版の水産白書も、小サバ輸出に取り組む長崎県の漁協の取り組みを紹介するなど、
国としても拡大方針を示している。
▽News Source TOKYO Web 東京新聞 2007年8月25日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007082502043814.html ▽水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/